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坂出市立病院 > 呼吸器外科

呼吸器外科

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年6月20日更新

呼吸器外科について 

 呼吸器外科というとあまり聞きなれない方が多いと思います。しかし、肺癌という病気を知らない人はいないでしょうし、肺癌をはじめいわゆる“肺”の手術を担当するのが呼吸器外科です。当院呼吸器外科が最も力を入れているのは、肺癌に対する完全胸腔鏡下(きょうくうきょうか)手術です。詳細は肺癌の手術の項目に記載していますが、3.5cm程度の切開で行うこの手術方法は、術後の傷の痛みも少ないため早期の社会復帰・家庭復帰が可能です。また当科ではこのほかにも、気胸や縦隔疾患に対する完全胸腔鏡下手術、手掌多汗症に対する胸腔鏡下交感神経焼灼手術など、幅広い胸部疾患に対する治療を行っています。

肺癌 

 

 1. 肺癌の現状

 現在の日本における癌死亡者数のうち肺癌が約5分の1を占め、癌の臓器別死亡者数では第1位となっています。この理由のひとつに、早期肺癌では症状がないため発見されにくいことが挙げられます。実際自覚症状が出現してから受診される患者さんの割合は多く、この段階になると手術単独では根治が難しい場合がほとんどです。一方で検診により自覚症状なく偶然発見された場合には、手術により根治が得られる可能性が十分にあります。こういった点からも毎年1回の検診はもちろんのこと、人間ドックのオプションで胸部CT撮影などにより、いかに早く異常を見つけるかが、肺癌に負けないためのカギとなります。

 

2. 肺癌の診断

 肺癌が疑われた場合、診断を確定するために画像診断のほか、細胞診あるいは組織診が行われます。

 画像診断では、CTやMRI、FDG-PET検査などの結果から病気の進み具合(病期あるいはステージといわれます)を判断します。CTは胸部レントゲンに次いで簡便に撮影できる画像検査でありながら、1mm程度の陰影であっても確実に描出できる優れた検査方法です。造影剤使用の有無により単純CT(造影剤を用いない)と、造影CT(肘の血管から造影剤を注入する)に分けられますが、造影剤を用いることなく数分で撮影が終了する単純CTでも、肺癌の詳細な形やサイズを把握することが可能です。また造影CTでは気管支周囲のリンパ節や肺動脈および肺静脈といった肺血管の詳細な把握が可能であり、これをもとに3D画像を作成することで、個々に異なる肺血管の走行を手術前に把握することができ非常に有用です(図1)。MRIは磁気を用いて撮影する画像検査法のため被爆の心配がありませんが、肺の撮影には不向きのため、通常は脳転移の有無を調べる目的で使用します。またFDG-PETは、CTとよく似た画像診断法ですが、CTが白黒画像なのに対して、FDG-PETでは肺癌病巣や転移巣など悪性を疑う部分が着色してみえ、良性と悪性の判断が困難な場合に非常に有用です。

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(図1) 左上葉肺癌の肺血管3DCT.赤が肺動脈、青は肺静脈、ピンクの腫瘤が肺癌.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 細胞診および組織診とは、病巣から細胞を採取して癌細胞の有無を診断する方法のことで、この検査によって癌細胞が検出されてはじめて肺癌の診断が確定します。細胞診および組織診の主な方法として、喀痰細胞診(痰の中の癌細胞の有無を調べる)、気管支鏡下生検(太さ約5mmの気管支ファイバーを口から気管支へ挿入して組織を採取する、図2)、CTガイド下生検(CTで腫瘤の位置を確認しながら胸の表面から細い針を刺して細胞を採取する、図3)などがあります。

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(図2)左下葉肺癌に対する気管支鏡下生検の様子.青矢印が気管支内に露出した肺癌.赤矢印の鉗子で組織を生検しているところ.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(図3)左上葉肺癌に対するCTガイド下生検の様子

 3. 肺癌の治療方針の決定

 肺癌の診断が確定すれば、次にステージに応じて治療方針を検討します。一般にリンパ節転移がないステージI、肺の中や肺の根部のリンパ節までの転移が疑われるステージIIでは、ほとんどの場合手術適応となります。一方で心臓周囲の縦隔(じゅうかく)リンパ節転移が疑われるステージIIIや、腫瘍が心臓や大血管、気管に直接浸潤しているような状況であれば、いきなり手術を選択しても切除しきれなかったり、肉眼的に切除できても再発の可能性が高いケースが多くみられます。このような場合、まず抗癌剤治療を行いその後手術可能かどうかもう一度判断する(導入化学療法)こともありますので、手術適応を一概に線引きすることは困難です。

 

 4. 肺癌の手術

 十数年前までの肺癌手術は、20~30cmの大きな切開による開胸手術が標準でしたが、近年胸腔鏡手術が普及し、比較的小さな切開で手術ができるようになりました。なかでも当科では完全胸腔鏡下手術を採用しており、国内でも最小クラスの3.5cm程度の切開で手術を行っています(図4)。

 

 肺癌手術における各種切開方法

 

(図4)  肺癌手術における各種切開方法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これにより術後の創部痛が軽減され、見た目にも綺麗な傷になります。現在の日本国内における肺癌に対する標準手術は、腫瘍が存在する肺葉(上葉、下葉などの単位)をすべて切除する肺葉切除ですが、小さくごく淡い陰影で発見されるような早期の肺癌に対しては、できるだけ多くの肺を残すことができるように、肺葉よりさらに細かい区域とよばれる単位での切除も積極的に行っています(積極的縮小手術)。また肋骨や横隔膜などへの直接浸潤や近傍のリンパ節転移を伴う局所進行肺癌に対しても、術前に抗癌剤を投与し病巣を縮小させた後、徹底的なリンパ節郭清(リンパ節の切除)を行う根治手術を行っています(図5)。ただし胸腔鏡手術にも限界があり、腫瘍の大きさや血管周囲の癒着などにより開胸手術を行う場合もあります。

抗癌剤治療により縮小した腫瘍

 

(図5)  

 a;上大静脈に直接浸潤が疑われる右上葉肺癌

 b;術前の抗癌剤治療により縮小した腫瘍

 

 

気胸 

 

 1. 自然気胸

 肺に小さな穴が開き空気が漏れることにより、肺が縮む気胸。一般的に若年者に多い特発性自然気胸と、喫煙による肺気腫や肺炎、肺癌などが原因となって発症する続発性自然気胸に分類されます。続発性自然気胸の原因は様々ですが、特発性自然気胸の場合の多くはブラとよばれる肺が風船様に膨らんだ部分に穴があき発症します。ブラができる原因はまだ解明されていませんが、痩せ形で高身長の若年男性に多いとされます。ただし比較的稀ですが女性にも発症します。

 

 2. 自然気胸の手術

 CTにより空気漏れの原因であるブラが確認されれば、5mmの切開を2箇所、1.5cmの切開を1か所加え胸腔鏡下にブラを切除します(図6)。また全例で再発率を少しでも低下させるために被覆材を用いた補強も行います。ただし強い肺気腫のある喫煙者や高齢者では、術中視野確保や操作性の観点から、開胸手術を選択する場合もあります。

 

非喫煙者の肺と喫煙者の肺

 

(図6)

  a;非喫煙者のきれいな肺

 b;喫煙者の肺にできたブラ

 

 3. 月経随伴性気胸

 女性の月経に合わせて気胸が起こることがあり、月経随伴性気胸と呼ばれます。詳細なメカニズムはまだ解明されていませんが、肺や横隔膜の一部に子宮内膜組織と同様の組織がみられ、月経にあわせて出血し肺や横隔膜の一部が破綻することで発症するとされていいます。月経随伴性気胸に対して通常の気胸手術では不十分で、病変のある横隔膜の一部を合併切除したり、ホルモン療法を併用し治療を行います。

 

縦隔腫瘍 

 

 1. 縦隔と縦隔腫瘍

 通常聞き慣れない縦隔(じゅうかく)という場所は、両肺に挟まれた心臓周囲を指し、気管や周囲のリンパ節、食道のほか胸腺などが存在します。縦隔にできる腫瘍の中で最も頻度が高く、約40%を占めるのが胸腺にできる胸腺腫です。胸腺とは胸の正中にある胸骨裏面に存在し、胎児のころにTリンパ球を教育する器官(組織)として活躍しますが、出生後は徐々に小さくなり、成人ではかなり薄い組織になります。この薄くなった胸腺にできる腫瘍の代表が胸腺腫です。胸腺腫は無症状のうちにCTで偶然発見されるものから、重症筋無力症という筋力低下を引き起こす疾患に関連して発見されるもの、痛みや顔面のむくみで発見されるものなど様々です。臨床的には悪性腫瘍に分類され、転移や浸潤、播種(腫瘍細胞が周囲へ飛び散ること)がみられることもあり、放置すると命にかかわることがあります。
 胸腺腫に次いで多いとされるのが気管支原性嚢胞と神経原性腫瘍です。気管支原性嚢胞は、気管支周囲に液体のたまった袋ができ徐々に増大する良性腫瘍です。また神経原性腫瘍は脊椎や肋骨周囲の交感神経幹や肋間神経といった神経から発生するもので、そのほとんどが良性腫瘍です。

2. 縦隔腫瘍の手術 

 胸腺腫のうち小さなものであれば胸腔鏡手術により切除が可能ですが、大きいものや周囲への浸潤がみられるものは、胸骨を切開する開胸下手術により摘出します。一方気管支原性嚢胞や神経原性腫瘍は基本的に胸腔鏡手術による切除が可能です。

 

手掌多汗症 

 1.手掌多汗症

緊張により手のひらに異常に汗をかく体質が手掌多汗症です。これは病気ではなく体質といえますが、患者さん本人にとっては非常にデリケートな問題です。手掌多汗症にはその重症度に応じてグレード分類があり、

 グレード1;手ひらが濡れているが汗は落ちない

 グレード2;拳をにぎると汗が落ちる

 グレード3;手のひらを開いた状態で汗が落ちる

とされています。

 

2. 手掌多汗症に対する保存的治療

 手掌多汗症に対する治療法として、塩化アルミニウム剤の塗布や微弱電流を通電するイオントフォレーシス、ボツリヌス毒素の手のひらへの注射、交感神経幹の切断手術(ETS)などがあります。一般に塩化アルミニウム剤の塗布とイオントフォレーシスの効果は個人差が大きく、効果が不十分であったり副作用の出現も懸念されます。またボツリヌス毒素の注射は数か月~1年程度の効果が見込めるようですが、繰り返し行う必要があり高額です。

 3. 手掌多汗症の手術

 手掌多汗症に対する手術療法として、従来よりETSが行われてきました。ETSは手掌の発汗を支配する交感神経幹という神経を切断するものですが、切断する場所によって代償性発汗が大きな問題になります。代償性発汗とは、手術後に胸や背中、太ももなどに異常に汗をかく状態をいい、特に夏場に多くみられます。手掌の発汗にはT2、T3、T4(第2肋骨~第4肋骨の高さ)の交感神経が関与していますが、高位(T2やT3)になればなるほど代償性発汗が多くみられます。当科ではT4を切断することで、T2やT3の切断に比べ多少の発汗は残るものの、代償性発汗も軽減できる手術を主に行っています(図7)。

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    (図7)a;交感神経幹(赤矢印) b;ETS後(交感神経幹が焼灼されている)


開業医の先生方へ;

レントゲンフィルム1枚のみでのご紹介でも結構です。地域医療連携室経由で診療予約いただくか、気胸や外傷のような急を要する場合は、呼吸器外科まで直接お電話ください(夜間は救急外来で対応します)。

 

 

担当医師について

 ■ 呼吸器外科部長:中野 淳(なかの じゅん)

nakanojyun

 香川県出身;平成13年香川医科大学卒業(前職;香川大学医学部附属病院 呼吸器外科講師)

 “手術待ち”の状態を少しでも減らすため、迅速な初診および手術を心掛けています。


 ■ 呼吸器外科医員:大久保 友人(おおくぼ ともひと)

  大久保友人  

 愛媛県出身;平成26年香川大学卒業


 

 診療予定表  [ 呼吸器外科 ]

診療予定表
 月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日

午前

午後

中野  淳

中野  淳

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大久保 友人

大久保 友人

※ 診療予定表の「―」は休診です。

医師紹介 [ 呼吸器外科 ]

ten 中野  淳   ( なかの じゅん )

役職部 長
専門胸腔鏡下手術、肺癌・気胸など呼吸器外科全般
資格

医学博士

日本外科学会 認定医、専門医、指導医

日本呼吸器外科学会 評議員、専門医

難病指定医

ten 大久保 友人   ( おおくぼ ともひと )

役職医 員
専門呼吸器外科
資格

 


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