ブラザーフッド・シスターフッド
きょうだいは家族の中でも一番身近な存在、今日は兄弟・姉妹の物語をご紹介します。
1冊目は、吉田修一/著「WATER」(『最後の息子』所収)です。
主人公の凌雲は水泳部に所属する高校3年生。高校生活最後の大会を前に、キャプテンとして県大会優勝を目指しています。凌雲のロールモデルは兄の雄大で、雄大も水泳部のキャプテンを務め、大会新記録で優勝しました。しかし、兄がバイクの事故で死んでしまいます。憧れだった自慢の兄を亡くしたうえに、母が精神のバランスを崩してしまい、自分の悲しみを抑えこむ凌雲。メドレーリレーのメンバーは幼馴染みで、楽しく過ごしているけれど、家業を継ぐであろう自分は、まわりと同じように親もとを離れて大学に進学することは難しく…。少年が痛みを乗り越え、たくましく成長する姿を描いた1冊です。
2冊目は、谷瑞恵/著『めぐり逢いサンドイッチ』です。
ビジネス街の公園近くにあるサンドイッチ専門店「ピクニック・バスケット」。店主で姉の笹ちゃんは、のんびりおっとりした性格で、とびきりおいしいサンドイッチを作るけれど商売っ気がなく、しっかり者の妹・蕗ちゃんが販売から宣伝、経理まで担当しています。ある日、名物のタマゴサンドが公園のごみ箱に捨てられていて…。お店を訪れる人の苦い過去や記憶を、とっておきのサンドイッチでやさしく上書きしてくれる物語です。物語後半にでてくる姉妹の秘密もお楽しみに。
3冊目は、西田征史/著『小野寺の弟・小野寺の姉』です。
東京の片すみにある、古い木造一軒家に暮らす姉弟。両親を早くに失くした小野寺家は、二人とも結構な歳ではあるけれど、姉のより子が親がわりで、頼りない弟の面倒をみています。自分がつい手を差し伸べてしまうせいで弟の成長を妨げているのではと悩むより子ですが、弟の進の方でも姉に対して複雑な思いがあるようで…。くだらないことでケンカをしては、不器用に仲直りをする姉弟の何気ない日常を描きながら、お互いを思いあう気持ちにほろりとさせられる物語です。
兄弟・姉妹の関係は、言葉にしなくてもお互いのことを理解できるという面もあれば、身近な存在だからこそ踏み込めない領域もあり、時にこじれてしまうこともありますよね。はたから見ると、微笑ましくももどかしい、そんなきょうだいの物語を集めました。ぜひお手に取ってご覧ください。
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