食欲と好奇心をそそる本
レシピ本や、食に関するエッセイ、食堂やカフェを舞台にした小説に、食べ物が出てくる絵本。おいしいものにまつわる本はいつでも人気があります。そんな中、今回はちょっと変わった切り口から食の世界へと誘う本を紹介します。
1冊目は、玉置(たまおき)標本(ひょうほん)/著『育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。実はよく知らない植物を育てる・採る・食べる』です。
人類はなぜカロリーがほぼゼロのコンニャクを作るのか、拾ってきたドングリで本格的な韓国冷麺ができるらしい、など書名の通り、よく知らない野菜を種から育てて収穫し、野草を採取して食べるところまでを描いた体験記です。あいまいな知識のまま、手探りで食用植物の加工・調理が進められていく本書は、試行錯誤も含めて体験する喜びに満ちています。インターネットで調べれば一瞬でたどり着く知識でも、時間をかけて身体で学ぶ醍醐味を教えてくれる、大人の自由研究な一冊です。
2冊目は、北尾トロ/著『ツキノワグマの掌を食べたい!猟師飯から本格フレンチまでジビエ探食記』です。
ジビエと呼ばれる狩猟鳥獣とその肉の種類は、全部で46種。長年狩猟を行うハンターでも、口にする種類はほんのわずかだそう。農作物への獣被害から駆除された個体が食べられることなく処分される現状や、食べもしないのにまずいと決めつけてしまうことに、著者は疑問を抱きます。本書では百聞は一見に如かずと、ハンター仲間からのお裾分けや、狩猟肉をいかに美味しく食べるかに心血を注ぐひとたちの協力を得て、狩猟で得た動物30種を食べまくります。まずいと言われている黒い鳥は本当においしくないのか検証し、アライグマを試食するなど、ちょっとハードルが高そうなジビエの扉も開いてくれるはずです。
3冊目は、小倉ヒラク/著『アジア発酵紀行』です。
中国雲南省・チベット・インドに、果ては内戦地帯まで。発酵デザイナーの著者が日本の糀のルーツを探り、大陸アジアを巡る旅の記録です。辺境で出合う発酵食は、チベットのバター茶にリス族の白酒、ネパールでのグンドゥルックなど、外界から隔離された環境下で独自の進化を遂げたものばかり。著者が知るセオリーや常識を覆し、時に日本の発酵食品との類似点を見つけるなど、道中はまさに驚きと発見の連続。発酵文化を巡る読み物としてはもちろん、エネルギッシュな旅行記としても楽しめます。
このほかにも、図書館には好奇心をくすぐる食の本がたくさんあります。食欲と読書の秋には、ぜひ図書館へお越しください。
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