どっぷりハマる民俗学
約一世紀前の6月14日、地方の民俗文化に深い関心を寄せた民俗学の父・柳田國男による説話集『遠野物語』が刊行されました。そこで今月は、伝承や風習にまつわる本をご紹介します。
1冊目は、武蔵野美術大学民俗資料室/編 『民具のデザイン図鑑』です。
民具とは、民衆の衣食住や生業をはじめ信仰や娯楽の中で創作・継承されてきた伝統的な造形物のこと。くらしをより豊かにするための知恵と工夫が詰まっているため、その時代の生活様式や土着文化を垣間見ることができます。本書では、約9万点に及ぶ民俗資料コレクションから特徴的なデザインのものが取り上げられており、香川からは、福の神であるエビスの郷土玩具・高松張子「鯛抱え恵比寿」が紹介されています。中国やインドなど外来の神々で構成された七福神の中で唯一日本の民俗神であるエビスの造形は、モチーフさえ押さえておけば、鯛の誇張やエビスのポーズなど自由な表現が許されるそうです。こうした興味深い歴史が息づく繊細な造形美を楽しみながら、郷愁的な日本の原風景に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
2冊目は、G.B.『日本異界図典』です。
"異界"というと何やら不気味に感じるかもしれませんが、人は古来より「境界」をひき自分たちが住む世界の外側は、どのような存在や出来事があってもおかしくない「異界」として恐れ敬ってきたそうです。今でこそキャラクター化され馴染みのある存在となった鬼や天狗など妖怪と呼ばれるものの類も、人々の恐れから創造された異界の住人であり、この「異界」から生まれた文化や伝承が日本全国津々浦々に存在します。例えば昔話でおなじみの『桃太郎』も現世と異界(=鬼ヶ島)を行き来する物語として語り継がれており、そのお供が猿、雉、犬である理由も、鬼のパンツが鬼門の方角である虎(寅)柄であることに由来しています。本書では、「空間」「モノと暮らし」「行事」「芸能」の四つのカテゴリ別に異界の概念を紐解いていきます。何気なく使う言葉や仕草、よく目にする色や形…そのルーツは暦や陰陽五行説など様々。知れば知るほど奥深い多様な民俗文化を通して、日本人の心のあり方を見つめ直してみませんか。
3冊目は、高田大介/著『まほり』です。
社会学を専攻している大学生の裕は、付き合いで参加した飲み会で興味深い逸話を耳にします。それは、"とある村では、二重丸が書かれた蛇の目紋の札がいたるところに貼られている"というもの。これに奇妙な好奇心を抱いた裕とその友人は、地誌や民俗誌などの史学史料にあたるため、夏休みの帰郷がてら現地に赴きフィールドワークを始めます。ところが、村は閉鎖的であるがゆえに調査は難航し謎は深まるばかり。古文書を解読していくにつれじわじわと浮かび上がる真実の数々、村落の祭礼や蛇の目に秘められた因習、そして表題「まほり」が示すものとは…?知的探求心をそそられる没入感満載の民俗学ミステリーです。
今回ご紹介した本の他にも、昔話・民話を読み解く本や祭事・葬送に関する本などもあります。日常に寄り添い、現代まで連綿と受け継がれてきた民俗学の魅力をお楽しみください。
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