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施政方針

印刷用ページを表示する更新日:2024年3月8日更新

 令和6年3月定例会の開会にあたり、提出いたしました諸議案のご審議をお願いするに先立ちまして、新年度の施政の方針について申し述べたいと存じます。

 

 まず、冒頭にあたり、元日に発生しました令和6年能登半島地震によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われ今なお不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の方々に、改めてお見舞い申し上げ、1日も早い復興をお祈りいたします。

 昨年は新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けが5類感染症へと移行され、約3年間にも及んだ新型コロナウイルス感染症との闘いも大きな節目を迎えたことによる人流の回復と経済活動の活性化に伴い、私たちの生活も少しずつ以前のにぎわいを取り戻してまいりました。

 このような中で4年ぶりに通常開催されたさかいで大橋まつりでは、総おどりや太鼓台競演の復活により、踊り手や担ぎ手たちの息の合った掛け声が響きわたり、まちは熱気に包まれました。また、フィナーレでは瀬戸大橋開通35周年を記念して、中四国最大級の1万5千発の花火が夜空を彩り、ふるさと坂出に夏のにぎわいが戻ってきたことを実感いたしました。

 一方、国際的な原材料価格の上昇に加えて、急激な円安の進行による物価高が暮らしを直撃し、市民生活における負担が増大しました。コロナ禍同様に、市政運営においては、市民の暮らしと生命を守ることが最優先であり、今後も足元の物価高に対して、きめ細かく必要な措置を講じてまいります。

 20世紀最大の国家プロジェクトと謳われた瀬戸大橋の開通は、人と物の往来を飛躍的に増加させ、「四国の玄関口」として、そして四国屈指の「働くまち」として、本市に多くの恩恵をもたらしてきました。その一方で、瀬戸大橋関連事業等に多大な財源を要したことで、新たなまちづくりへの投資が遅れ、今もなお人口減少と地価の下落という長いトンネルから抜け出せずにいます。今こそ未来への投資を増やし、まちの価値を高めることで、新たな民間投資を呼び込み、「住みたいまち」へと生まれ変わらなければならないと決意し、打ち出した公約については、可能なものから事業展開を図るとともに、市民の皆さまの声や社会情勢の変化を踏まえて準備・検討を重ね、新年度はいよいよ実行の段階へと移ってまいります。

 動き出した新しい坂出のまちづくり、その象徴となるのが中心市街地の再生であります。最重要施策に位置付けて取り組んでまいりました坂出駅周辺再整備については、「みんなの“ココチよさ”がかなうまち」を実現するために、重点地区とする坂出駅前エリア、坂出緩衝緑地エリアにおいて新たな魅力を創出し、それらを結ぶ中心軸と周辺エリアのつながりを強化しながら、まち全体の回遊性を高めることをめざしており、昨年4月にはこのような再整備の考え方や内容を示した事業の実施方針を公表しました。

 坂出駅を中心に、地域公共交通の結節点となっている坂出駅前エリアについては、人を中心とした空間へと再編し、全ての人にとって「まちのリビング」と呼べる居場所にすることをめざしております。本年度は、図書館を核とした新たな拠点施設の整備に向けて、駅北側の道路線形を見直し、バスターミナルを駅南側に移転することで、これまでどおり商店街エリアからの車両の南進を可能にする、新たな都市計画を決定いたしました。

 一方、昨年9月には、坂出駅前エリアに位置するイオン坂出店が、一時休業することが発表されました。今後については、老朽化した既存の建物を取り壊したうえで、本市の駅周辺再整備の方針を踏まえて新たな事業計画を検討されるとのことであり、先日には、私自身がイオンリテール株式会社の本社を訪問し、早期再開を要請したところであります。本市としましては、新しく生まれ変わるイオン坂出店と引き続き包括的に連携・協力しながら、中心市街地再生に取り組んでまいります。

 もうひとつの重点地区である坂出緩衝緑地エリアについては、坂出北インターチェンジのフルインター化およびさぬき浜街道の4車線化が予定されており、利便性向上による新たな人流が生まれることを期待しております。その中で、新年度は両景橋東側に位置する東大浜緑地について、本市が公園管理者となったうえで、多様な世代が集い、交流する「市民の居場所」となるよう、民間事業者と対話を進めてまいります。

 まちを歩けば変化が実感できます。坂出人工土地エリアについては、中心市街地再生の第一歩として工事に着手しており、市民ホール前広場および周辺歩道における水路との段差を解消し、ウッドデッキやベンチ、芝生等を整備することで、人々が集い安らげるオープンスペースとして再生を図ってまいります。

 また、本市の中で今最も景色が変わってきているのが商店街エリアであります。土地の流動化により、エリアが持つ本来の価値を高めるため、老朽化したアーケードを撤去し、照明のLED化や車両通行規制の解除などの事業を進めており、本年度より開始した空き家撤去後の固定資産税減免制度との相乗効果によって、まちの新陳代謝を妨げていた空き家が減少してきており、新たな民間投資の動きにもつながっています。新年度においては、この流れをさらに加速するため、空き家バンクに登録されている居住誘導区域内の物件を改修する場合は補助額を増額して、集中的に空き家対策を講じ、中心市街地の良好な景観の形成に努めてまいります。

 そして、これら中心市街地を再生していくための新たなパートナーとなる、民間事業者の公募を、先般、開始いたしました。公募に際しては、要求水準等の作成につなげるため事前に民間事業者から提案を募集する仮公募を実施し、想定を超える多くの申込みをいただくなかで、個別に対話を重ねてまいりました。また、広く市民を対象としたワークショップを開催し、高校生から70歳代までのさまざまな世代の方から貴重なご意見やご提案をいただきました。それらを踏まえ、精査・検討を重ね、PFI法に基づく特定事業の選定を行うとともに、事業内容や整備水準等を定めた要求水準および募集要項を公表しました。

 新年度においては、民間事業者からの企画提案書の提出を受けて、公募型プロポーザル方式にて優先交渉権者を決定し、年内に事業契約を締結することとしており、計画の全体像をお示しできる次第です。市民の皆さまと共に描いたビジョンを、新しい坂出の姿として具現化していくために、引き続き共創による持続可能なまちづくりを推進し、坂出再生を確かなものとしてまいります。

 

 国家は人によって栄え、人によって滅ぶと申します。子どもたちの教育環境の充実を図ることは、まさしく未来への投資であり、これからのまちづくりの基盤となるものであります。グローバル化が進展し、人工知能やIoTが日常化した新しい時代を生き抜く子どもたちには、多様な人間関係を結び、共に新たな価値を創造していく力が求められています。

 学校再編整備については、児童生徒数の減少や学校施設の老朽化を踏まえて、適正規模・適正配置により個別最適な学びの実現をめざしており、現在、前期5年程度を目途に整備を進めることとしている再編対象校区において、保護者や地元住民への説明会を開催し、その中でいただいたご意見を踏まえ、小中一貫教育の導入、対象校の組合せ、再編整備の時期や場所などの基本的な考え方をまとめた、坂出市学校再編整備実施計画を策定中であります。新年度においては、事業の具体化に向けて、建設条件などの整理・検討を進め、新しい時代の学び舎づくりに全力を尽くしてまいります。

 海や山、田園風景などの豊かな自然環境は本市の貴重な財産であり、この財産を次世代に引き継ぐため、環境に配慮した持続可能な社会の構築が求められています。本市では、令和3年9月に「ゼロカーボンシティ」を宣言し、その達成に向けてZEH基準を満たす住宅への補助制度の創設やマイボトル用給水機の公共施設等への設置、本市在住画家の山口一郎氏がデザインしたマイボトルの販売など、地域全体の環境意識の醸成と行動変容を促すため、分野横断的に取組を推進してまいりました。

 新年度においても、瀬戸内海の「環境保全」と「水産業」に着目して、藻場の再生、創出活動に取り組んでいる香川大学と連携し、ブルーカーボンの活用と海洋生態系の保全に向けた新たな取組を開始するほか、地域経済をけん引してきた番の州コンビナートの脱炭素化に向けた協議を進めるなど、更に多面的な視点から戦略的に施策を展開してまいります。

 そのほかにも、田尾火葬場の整備や旧市立病院跡地の利活用、自治体DXの推進、自主財源の確保など、山積する課題に対して責任を持ち、今後も決断と実行により、止まっていた針を前に進めてまいります。

 就任以来取り組んでまいりました、公民連携を軸とした行政運営を一層進化させるため、本年度から地域活性化起業人制度を活用し、ふるさと納税・観光・DX分野において専門的知見を有する人材を民間企業から受け入れ、体制の強化を図りました。新年度においても、3大都市圏などから地方に移住して、地域協力活動に取り組む地域おこし協力隊制度を活用し、新たに移住コーディネーターとして人材を受け入れることとしており、移住体験ツアーやオンライン相談など情報発信の強化に取り組み、移住希望者に「選ばれるまち」となるよう、攻めの姿勢で施策を展開してまいります。

 

 激動のコロナ禍を経て、社会が少しずつ希望を取り戻していったように、本市のまちづくりも、今、坂出再生に向けて動き出しました。しかし、その再生への道は、「新しい日常」に向かうものであり、「働くまち」と「住むまち」が両立し、うるおいと活力に満ちた、明るい未来につながるものであります。私は「変化を止めるな」との市民の声を真摯に受け止めながら、ふるさと坂出の発展のため、残された任期、一身を投げ出し、職責を果たすべく全力を尽くしてまいる所存でありますので、議員各位ならびに市民の皆さまのご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 

 このような方針に基づき編成いたしました新年度予算は、一般会計で255億4,100万円、特別会計では133億2,175万3千円、企業会計としては、病院事業会計で81億4,721万1千円、下水道事業会計では24億3,281万5千円を計上いたしました。以下、主な事業の概要について、まちづくり基本構想に示す6つの大綱に沿ってご説明いたします。

 


 

第1の目標は、「すべての人がいきいきと輝くまちづくり」

であります。

 中心市街地の再生においては、市民の皆さまや民間事業者など、多様な主体が連携・共創し、それぞれが地域の「主役」となる、新しい形のまちづくりを進めております。先ほども申し上げましたとおり、先般、坂出市中心市街地活性化公民連携事業の実施にあたり、民間事業者に求める要求水準等を定めた募集要項を公表し、公募型プロポーザル方式による事業者選定に向けた手続きを開始いたしました。その中では、民間事業者の創意工夫・アイデア・ノウハウ・技術力・資金調達力等を最大限いかすため、市が設定する要求水準は基本的な考え方の記載に留め、整備運営内容については民間事業者の提案に委ねることとしております。また、事業方式については重点地区と位置付けた2つのエリアを一体として捉え、PFI事業として包括的に整備運営することを前提としたうえで、複数の方式および手法を組み合わせた提案を可能としており、公民連携の新たな可能性を切り拓く事業となっております。

 また、駅前拠点施設については、約20万冊の蔵書数を有する知の集積拠点として多様な学びと新たなライフスタイルを提案する図書館機能、子どもたちの好奇心を満たす遊びの場や一時預かり、育児相談等を備えた子育て支援機能、中央公民館および勤労福祉センターを集約し、地域住民の主体的な活動を支援する場となる市民活動拠点機能、本市の玄関としてのラウンジやギャラリー、物販スペース等を有する来訪者の拠点機能から構成され、本市のシンボルとなる外観デザインと「まちのリビング」にふさわしい、くつろぎと安らぎを与える内装空間を実現してまいります。

 坂出緩衝緑地エリアについては、新年度より本市が公園管理者となる東大浜緑地のほか、東大浜第1公園および第3公園を対象として、ランドスケープデザインの視点を取り入れることで、デザイン性・機能性に配慮した一体的な空間として整備してまいります。具体的には豊かな自然と長大な空間をいかし、緩衝緑地としての機能を維持しつつ、多様な世代が集う市民の活動拠点としての機能と都市空間と日常をつなぐ憩いの場としての公園機能が融合した「市民の居場所」として、芝生広場や遊具に加え、貸室やカフェ等を有する拠点施設を設けることで、新たなコミュニティ拠点を創出してまいります。

 民間事業者には、新たなまちづくりのパートナーとして20年という事業期間を設定して、長期的な視点で、安定的かつ継続的に質の高い公共サービスを提供することを求めており、そのためには市民ニーズの十分な把握と関係機関との連携が不可欠です。特に図書館運営においては、「子どもでつながる。未来でつながる。」の理念のもと、優れた提案力で市民の暮らしに役立つ図書館像を体現してきた大橋記念図書館や、読み聞かせなどの市民の読書活動を支えてこられたボランティアの方々と十分な連携・共創を図ることで、持続可能な運営体制の実現に取り組んでまいります。

 市政の最上位計画に位置付け、中長期的な展望のもとでまちづくりの指針を定めた坂出市まちづくり基本構想について、令和7年度末にて10年間の対象期間が終了するため、新年度は次期計画策定に向けた市民意識調査を実施してまいります。その後の計画策定過程においては、ワークショップや関係団体との懇談会等を計画しており、これまで以上に市民参加型のまちづくりを進めてまいります。

 少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、労働者不足が社会問題となっており、デジタル化の推進による生産性向上と労働環境の改善が急務となっております。本市においても、新年度より公文書の作成・保存・廃棄等の一元管理および電子決裁などが可能な文書管理システムを導入し、ペーパーレス化と職員の業務改善を図ってまいります。また、多様化する行政需要に対応するため、社会人経験者の募集を強化しており、年齢制限の引上げや対象職種の拡大など、取組を進めております。しかしながら、労働者不足の中で自治体間においても人材確保に向けた競争が激しさを増している現状も踏まえ、新年度では、募集時における対象年齢の更なる引上げや試験内容の見直しについて早急に検討を進め、これまで以上に受験しやすい環境を整えることで、優秀な人材の確保に努めてまいります。

 ふるさと納税については、自主財源の確保策であるとともに、関係人口の増加や地域産業の活性化にもつながる制度として、主要ポータルサイトの導入や魅力ある返礼品の発掘など精力的に取組を進めてまいりました。新年度においても、引き続き地域活性化起業人制度を活用し、民間企業の知識とノウハウを最大限活用しながら取組を推進することとしており、さらに企業版ふるさと納税やクラウドファンディングにも注力しながら、寄附額増加に向けて強力に施策を展開してまいります。

 

第2の目標は、「安全で環境に優しく持続可能なまちづくり」

であります。

 

 令和6年能登半島地震は、改めて私たちの災害対策に警鐘を鳴らしました。今回得た教訓を今後発生が懸念される南海トラフ巨大地震等の災害対策にいかしていくことは、私たち行政機関に課された使命であります。大規模災害発生時の被害を最小限に抑えるためには、「公助」だけでなく「自助」や「共助」が重要であり、家庭や地域における防災力の強化に努めてまいります。新年度では、災害の特徴や避難行動のポイント、災害への備えなどを分かりやすくまとめた本市独自の防災ハンドブックを作成し、全戸配布することとしており、地域と一体となって防災意識向上につなげてまいります。

 また、地域防災力の強化に向けて、現在緊急地震速報などの同報系防災行政無線の音達範囲外となっている大屋冨地区の一部において、屋外子局を増設し緊急時の迅速な情報伝達を進めてまいります。さらに、激甚化・頻発化する台風や集中豪雨等に備えるため、ため池ハザードマップを作成して地域住民に周知するとともに、カメラや水位計を設置し、遠隔監視ができる体制を整えることで、水位上昇等の状況変化の早期把握に努め、ため池の防災・減災に向けた取組を加速してまいります。

 全国的に高齢者が関係する交通事故が多発しており、高齢者の運転免許証自主返納制度の利用を促進し、交通事故の抑止を図ることは重要な課題となっております。本市では運転免許証を自主返納した市内在住の65歳以上の方に対して、タクシー利用券と路線バスの地域割引回数券を交付しておりましたが、本年3月末をもって回数券が廃止となることから、路線バスのほかにも循環バスやデマンド型乗合タクシーで利用できる公共交通プリペイドカードを新たに交付し、助成額も増額して制度の利用促進を図ってまいります。

 老朽化が進んでいる田尾火葬場については、先般、建設候補地を決定したところであります。火葬場は亡くなられた方を見送る場であるとともに、人生の最後を見送られる場として、非常に高い公益性を有しており、安定的に稼働することが求められる重要な施設であることから、今後、地元住民や関係者のご理解を得られるように、対話を重ねながら施設整備を進めてまいります。

 温室効果ガス排出量実質ゼロをめざす「ゼロカーボンシティ」の実現に向けて、本年度は、本市の地球温暖化対策に関する基本方針となる坂出市地球温暖化対策実行計画を策定し、市域における温室効果ガス削減目標とその達成に向けた施策をまとめたところであり、新年度においては政策課内に「未来エネルギー推進係」を設置し、更に多面的な視点から戦略的に施策を展開してまいります。

 「海のゆりかご」と言われ、水中の有機物を分解し、海水の浄化にも大きな役割を果たしている藻場は、ブルーカーボン生態系とも呼ばれ、二酸化炭素を吸収し固定化させる機能を持ち、その吸収量は森林を大きく上回ると言われており、温暖化対策への貢献も期待されるところです。新年度においては、「瀬戸内再生のための「人×技術×海」マッチング共創拠点」プロジェクトを進める香川大学と連携し、藻場の再生、創出についての調査を実施してまいります。

 また、民間事業者と連携して進めている電気自動車用充電設備については、本年度の現地調査の結果を踏まえ、市内公共施設等への設置を進めるほか、ゼロカーボンシティの実現に向けた市内事業者との推進パートナー制度やマイボトル携帯の普及促進に向けたマイボトル協力店制度の創設など、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた施策を強力に推進してまいります。

 

第3の目標は、「健康で安心して暮らせるまちづくり」

であります。

 新型コロナウイルス感染症については、5類感染症移行に伴い、幅広い医療機関で患者が受診できる医療提供体制の構築に向けて、段階的な見直しが図られてきたところであり、新年度からは確保病床を必要としない通常対応に移行することとされております。平成31年3月に中讃地域唯一の第二種感染症指定医療機関として指定を受け、最前線で2千人を超える入院患者を受け入れてきた坂出市立病院にとりましても大きな節目を迎えますが、コロナ禍で蓄積してきた知識やノウハウをいかし、地域の中核病院として引き続き新型コロナウイルス感染症などの感染症対策に万全を期してまいります。また、入院患者数に対して受入病床数が不足している血液疾患への対応を強化するため、病棟に無菌室を増設し、中讃地域における血液内科の拠点病院をめざして環境整備を行ってまいります。

 加速度的な少子化の進行、単身世帯や共働き世帯の増加などを背景として、子どもを取り巻く環境が大きく変化してきておりますが、いつの時代においても、子どもたちの健やかな成長は地域全体の願いであります。新年度では加茂地区において認定こども園を開設し、新園舎として既存施設の改修整備を進めることとしており、一定の集団規模の確保と保育環境の充実を図ってまいります。

 子育て支援については、妊娠・出産・子育てまでの切れ目のない支援の実現をめざし、施策を展開してまいりましたが、子育て世代の多様化するニーズを踏まえ、引き続き支援の充実に取り組む覚悟であります。本市独自の事業であるすくすく赤ちゃんおむつ助成券支給事業については、特に乳児の期間、紙おむつの消費枚数が多く経済的負担も大きいことから、新年度より助成内容を充実させ、一層の負担軽減に努めてまいります。また、一般には「おたふくかぜ」として知られ、さまざまな合併症を引き起こし、難聴などの後遺症が残る可能性もある流行性耳下腺炎についても、市内の多くの医療機関で予防接種を推奨している状況を踏まえ、新年度より予防接種費用の一部を助成することとしており、今後も子育て世代に「選ばれるまち」の実現に向けて、幅広い支援を実施してまいります。

 高齢者福祉については、本年度、高齢者福祉計画および第9期介護保険事業計画を策定し、「健やかに 幸せな まちづくり」「楽しく 豊かな 生きがいづくり」「思いやりのある 地域ネットワークづくり」の基本目標の達成に向けて、各種施策を展開してまいります。新年度においては、認知症の方やその家族が住み慣れた地域で共生できる社会をめざすため、本人・家族のニーズと認知症サポーターなどの支援者をつなげる仕組みである「チームオレンジ」を結成し、対策を進めてまいります。また、その結成に向けては自治体が抱える社会課題に対して、東京大学の学生チームが調査や現地活動を通して解決に向けた提案を行う、フィールドスタディ型政策協働プログラムに参画し、学生の柔軟な発想と大学の豊富な知見を活用しながら、新たな仕組みづくりに取り組んでまいります。

 人権尊重社会の実現に向けては、本年度に実施した人権に関する市民意識調査における各種人権課題に対する市民意識の変化を踏まえながら、人権教育・啓発活動に取り組んでまいります。性的マイノリティに対する取組については、令和4年6月よりパートナーシップ宣誓制度を導入しているところですが、新年度においては制度を拡充し、パートナーシップ関係にある2人の一方もしくは双方の子または父母等についても家族関係にあることを証明する、ファミリーシップ宣誓制度を導入してまいります。また、深刻化するインターネット上の誹謗中傷、プライバシー侵害等に対応するため、表現の自由に配慮しつつ、啓発や相談体制の確立に向けた新たな条例を制定する準備を進めており、市民の皆さまが被害者にも加害者にもならないよう、必要な施策を実施してまいります。

 

第4の目標は、「未来を拓く力をはぐくむまちづくり」

であります。

 未来を拓く力となるのは子どもたちや若い世代であり、新しい時代を生き抜く心豊かでたくましい人材を守り育てていくことは、これからの持続可能なまちづくりの礎となるものであります。

 学校再編整備については、令和4年10月に外部の専門家や関係団体の代表者からなる坂出市学校再編整備検討委員会より、今後の具体的な方策について答申を受け、その中で示された前期5年程度で整備を行うこととしている再編対象校区について本格的な検討を開始しております。現在、対象校区の保護者等に対して、本市の考え方を説明し、その中でいただいたご意見を踏まえて、坂出市学校再編整備実施計画を策定中であります。新年度においては、中心市街地再生におけるまちづくりの視点も考慮しながら、新校建設に向けた建設条件や施設内容、手法等をまとめた再編新校前期建設基本計画を策定し、引き続き保護者や地元住民との対話を重ね、未来思考で子どもたちが明日も通いたくなる、魅力ある学校づくりに取り組んでまいります。また、再編整備の状況に関わらず、学校施設の安全・安心の確保は最優先であり、適切な維持管理に努めるとともに、適宜必要な改修・修繕を実施してまいります。

 学校給食については、香川県内の他市町に先駆けて小学校給食費の完全無償化を実現するとともに、令和4年9月からは学校給食センターの供用を開始し、坂出三金時などの地場産品の提供や日々の給食メニューの動画配信など先導的に取組を進めており、本年1月からは香川県の補助制度を活用し、県産農水産品の更なる利用拡大と食育推進に向けた新たな取組を開始しております。一方、昨今の物価高騰により安全・安心で質の高い学校給食の提供が一段と難しくなっており、新年度より食材購入への補助金を拡充し、新たに保護者負担が発生しないよう必要な対策を講じてまいります。

 全ての小学校において実施してまいりました、ふるさとへの理解を深め、地域への愛着と誇りを育む、ふるさと理解推進事業については、新年度より中学校にも対象を拡大し、地域との連携を強化しながら、体験内容の充実に努めてまいります。また、改訂を計画している小学校社会科副読本「ふるさと坂出」についても、本市の豊かな教育的・文化的資源の有効活用を図りながら、子どもたちの郷土を愛する心と地域社会と共生していく能力の育成につなげてまいります。

 市内小中学校において増加傾向にある不登校児童生徒への対応については、これまでスクールソーシャルワーカーの配置など、学校全体で支援体制の充実に努めてきたほか、3つの中学校内に不登校対策教育支援センターを設置し、専任職員が教育相談や学習支援を行うなど、生徒の自立に向けた指導・支援に取り組んでまいりました。しかし、不登校の原因や状態はさまざまであり、特に校内にある教育支援センターに通えない児童生徒への相談や支援、居場所づくりは大きな課題であることから、新年度では専門機関と連携し不登校およびその傾向にある全ての児童生徒への学校内外における教育相談の実施や、校外での教育支援センターの設置に向けた検討など、個別の状況に応じた不登校対応の強化を図ってまいります。

 これまで市民の生涯学習や文化振興を支えてきた多くの公共施設において老朽化が進行しており、早急な修繕と適切な維持管理が求められています。利用開始より20年以上が経過している市民ふれあい会館については、修繕の必要が生じている外壁タイル等の改修工事を実施し、利用者の利便性向上と指定避難所としての機能強化に取り組んでまいります。また、本市の発展を支えた入浜式塩田を伝える唯一の施設である塩業資料館についても老朽化が著しい現状を受け、新年度では屋上防水工事を行うとともに、施設の適切な維持管理に努めてまいります。

 地域の文化振興に欠かせない文化財の保護にも引き続き取り組んでまいります。落雷により被災した国宝神谷神社本殿の修復については、国・県とも緊密に連携を図りながら、早期の復旧に向けて必要な措置を講じてまいります。また、讃岐国府跡については、整備に関する現状と課題の整理を進め、整備基本計画の策定をめざしており、同史跡において重要地区となっている開法寺跡の調査を含め、周辺地域の一体的な活用に向けて、関係者との協議を重ねてまいります。

 0歳児に対して絵本をプレゼントするブックスタート事業については、新年度より対象を広げ、3歳児に対しても絵本をプレゼントするセカンドブックサービスを開始いたします。そして、これらの取組を「絵本のまちさかいで推進事業」と位置付け、絵本を通じた交流によって、今後も子どもたちが豊かな心を育めるよう積極的に施策を展開してまいります。

 

第5の目標は、「快適な都市環境を実現できるまちづくり」

であります。

 快適な都市環境の整備は、社会全体にとって必要なものであり、人々の生活の基盤となるものであります。

 公園は市民の憩いや健康増進、子どもたちの遊び場などさまざまな機能を有するとともに、特定の目的を持たない全ての人が、いつでも利用できる都市のオープンスペースとして、日々の暮らしに広がりと豊かさをもたらすものであり、市民の快適な「パークライフ」を実現するため、引き続き公園の再生に取り組んでまいります。現在、公園に設置しているトイレの多くが老朽化しており、利用者ニーズにも合致していないため、順次洋式化を進めているところであり、新年度では鉄砲町児童公園および西庄児童公園において整備を行ってまいります。

 また、中心市街地における貴重な緑地空間として市民の憩いの場となっている香風園については、本年度は西門を再建するとともに、時雨亭かやぶき屋根の改修工事等を実施し、9月にはリニューアルを記念してセレモニーを開催したところであり、新年度についても鯉の再放流や池の水質向上などに取り組み、市民のシビックプライドを醸成する街のオアシスとして、整備を進めてまいります。

 坂出人工土地周辺は、坂出駅と坂出緩衝緑地を結ぶ中心軸に位置し、ウォーカブルなまちづくりを進めるうえで要となるエリアであります。約3年の期間を費やした大規模改修工事により、外観等も一新した市民ホールをはじめとして、本年度からは市民ホール前広場および周辺歩道の整備を進めており、水路との段差を解消して芝生化やウッドデッキの設置などを行うことで、駅前通りにふさわしい景観と安全性を兼ね備えた、人々が集う安らぎの空間として再生を図ってまいります。

 公共交通については、令和4年11月に坂出市地域公共交通計画を策定し、持続可能な公共交通の実現に向けて取組を進めております。本年度は市内の路線バスやデマンド型乗合タクシーについて運賃を統一的に見直し、「ゾーン運賃」を採用するとともに、新たな決済手段として、キャッシュレス決済アプリ「TicketQR」を導入して、同アプリとマイナンバーカードを連携した市民割引についても利用を開始したところです。また、循環バスについては利用者が少ない中ルートを廃止し、東ルート・西ルートの運行区域を拡大したほか、デマンド型乗合タクシーについても、利用に当たっての事前登録を不要とするなどの見直しを行い、地域住民の利便性向上に努めながら、重層的に施策を展開しております。新年度においても、「TicketQR」利用者に対する市民割引の継続やイベント開催に合わせた公共交通無料デーの実施などに取り組み、公共交通施策に対する市民の認知度向上と更なる利用促進につなげてまいります。

 空き家については、適正に管理が行われていないことが問題であり、所有者に一義的な責任があることを前提としつつ、地域住民の住環境に悪影響を及ぼし、まちの新陳代謝を妨げている現状を踏まえ、地域全体の問題として総合的かつ計画的に対策を講じていく必要があります。これまで空き家の無償譲渡を希望する所有者と取得希望者をつなぐマッチングや相続登記を促進する情報発信などで民間事業者と連携協定を締結したほか、空き家を除却した土地の固定資産税を減免する制度を創設するなど、精力的に施策を展開してまいりました。先ほども申し上げましたように、新年度においては、移住促進・空き家改修補助金を拡充して、空き家バンクに登録されている居住誘導区域内の物件を改修する場合は補助額を増額し、中心市街地における空き家対策を集中的に講じてまいります。

 坂出駅周辺の中心市街地における良好な交通環境を整備することは、地域住民の安全性と利便性の向上につながるとともに、本市が持つ交通結節点としての機能を強化し、快適な都市空間を実現するために無くてはならないものです。京町線北西に位置する商店街エリアでは、高層マンション等の住宅開発により今後も交通量の増加が見込まれておりますが、既存の都市計画では商店街エリアからの車両の南進ができなくなるという問題が生じており、これを解決するため、京町線の道路線形の見直しを行うとともに、バスターミナル等の配置を見直す都市計画の変更を行いました。変更後の計画においては、駅の南側にバスターミナル、北側にタクシー乗り場と自家用車利用ゾーンを配置することとしており、これまでの京町線が果たしてきた交通機能を強化するとともに、坂出駅北側への図書館機能を核とした拠点施設の整備を見据えて、人を中心とした快適な都市空間の実現をめざしてまいります。

 番の州臨海工業団地を含む坂出港エリアの基盤強化は、「港湾工業都市」である本市のまちづくりにおいても中核をなすものであります。一方、日本全体の産業構造が大きく変貌するなかで、港湾を取り巻く環境もますます多様化・複雑化しており、今日では大規模災害発生時の復旧拠点としての機能やパンデミック発生時における水際対策に加え、港湾の脱炭素化など、より広域的な視点での管理運営が不可欠となっております。これまで坂出港の管理運営につきましては、昭和28年に議決された「坂出港管理に関する協定書」に基づき、本市が管理者となり、香川県が計画・建設を担ってまいりましたが、将来的に望ましい港湾管理の在り方について、総合的かつ戦略的な観点より検討を行うため、香川県との協議を進めてまいります。

 

第6の目標は、「元気とにぎわいのあるまちづくり」

であります。

 コロナ禍によって人々の暮らしに関する意識が大きく変容するなか、若者を中心に地方へ向かう人の流れが生まれ、受け入れる地方においてもこれまで以上に競争が過熱しており、自治体が比較され、選別される、新たな時代を迎えております。本市においても、子育て世代に「選ばれるまち」の実現に向けて、幅広く切れ目のない子育て支援に取り組んでおりますが、移住先を選択する際には、「快適な住環境」も重要な要素になることから、引き続きZEH基準を満たす住宅取得者への補助を行うほか、新年度からは移住促進・空き家改修補助金を拡充するなど直接的な支援の充実を図るとともに、学校や公園などの整備にも取り組み、移住希望者等のニーズを捉えた環境整備に努めてまいります。

 また、移住者の増加に向けて本市の魅力や手厚い支援内容が伝わるよう、これまで以上に情報発信の強化に取り組むと同時に、移住を決断するまでの体験や相談機会の充実を図ることが重要であり、伴走型で着実に移住者の受け入れにつなげていくため、新年度から移住コーディネーターを配置し、相談窓口の一元化と移住フェア等での積極的な情報発信に取り組んでまいります。

 本市の産業と生活を支えている農林水産業の振興については、国の基本指針の変更を受け、本年度より坂出農業振興地域整備計画の全体見直しに着手し、住民意向調査や関係団体との調整などを進めてきたところであり、新年度においては変更案を取りまとめ、優良農地の保全と利用促進につなげてまいります。また、坂出北部地区においては、金時人参などの品質向上を図るため土地改良事業を進めており、新年度では令和9年開始予定の同二期地区事業に向けた調査を開始し、農産品の更なる競争力強化に取り組んでまいります。

 坂出三金時などのブランド化に向けては、優良品種の導入に対する助成やふるさと納税返礼品への積極的な登録などを継続するほか、新年度においては首都圏におけるアンテナショップである「香川・愛媛せとうち旬彩館」において、坂出市観光協会と連携した観光・物産フェアを初開催し、市全体として認知度向上に努めてまいります。

 観光振興については、令和7年度に開催される大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭を見据えて、精力的に施策を展開してまいります。全国的に知名度が高い観光情報誌「るるぶ」の坂出市版を制作して、各地のサービスエリアや道の駅などで配布するとともに、電子雑誌「旅色」の国内版・台湾版にも観光情報を掲載し、ファミリー層や若い女性などをターゲットとして、本市の魅力発信に努めてまいります。また、引き続き地域おこし協力隊制度を活用し、SNS等による発信を強化するとともに、地域資源を活用した新たな観光イベントの創出などに取り組み、交流人口の増加につなげてまいります。

 昨年11月に坂出緩衝緑地にて初開催され、魅力的な空間演出により4,200人を超える来場者を集め話題となった、さかいで輝ノ夜については、新年度も継続実施し、坂出の夜を楽しむ新たな参加型イベントとして定着を図ってまいります。また、さかいで大橋まつり海上花火大会については、新年度は打ち上げの規模が通常開催に戻りますが、これまで以上に観る人にとって満足度の高いイベントとなるよう、花火と音楽をコラボレーションさせた華やかな演出に取り組んでまいります。

 中小企業支援については、新型コロナウイルス感染症や円安、物価高などの経営環境の変化に対応するため、四国地域唯一の「ビズモデル」拠点である、坂出ビジネスサポートセンター(Saka-Biz)を中心に、引き続き企業の売上向上と創業支援に取り組んでまいります。新年度では、Saka-Bizにおけるアンケートでも要望が多かった起業・創業に対する支援を強化するため、店舗や事業所などの開設に要する費用等を補助する新たな制度を開始いたします。また、商店街においては、新年度より本町中央商店街を対象としてアーケードの撤去等の街並み整備を進めることとしており、中心市街地におけるまちづくりと連動しながら、起業や創業の場としても「選ばれるまち」をめざし、総合的に施策を展開してまいります。

 本市のみならず香川県産業をけん引してきた番の州コンビナートの脱炭素化および産業競争力の強化を図るため、先般、設立した「坂出市番の州コンビナート水素等利活用推進協議会」においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、官民一体となって脱炭素化への取組を進めております。新年度においては、番の州地区での水素等次世代エネルギーの調達・活用等の在り方について議論を深め、番の州企業の競争力の強化、新たな次世代エネルギー関連産業の創出など、産業全体の成長や坂出港の脱炭素化の実現に向け、そのめざすべき将来像を検討してまいります。

 

 以上、市政に臨む施策の大綱を申し述べました。

 市長就任にあたり、市民の皆さまにお誓い申し上げた「坂出再生」を必ずや実現するため、「変わる勇気と変える覚悟」を持って、職員と知恵を出し合いながら、一丸となり市政運営にあたってまいりました。そして、今、少しずつではありますが、確かに未来へと続く新しい風を感じております。

 今後も坂出駅周辺再整備をはじめとして、市民の皆さまや民間事業者との共創によるまちづくりを推進し、「働くまち」と「住むまち」が両立する「選ばれるまち」へと生まれ変わるため、不退転の覚悟で臨んでまいります。

 何とぞ、皆さま方のご理解とご協力、ご支援を賜りますよう心からお願い申し上げ、令和6年度の施政方針といたします。