小原紅早生(金時みかん)
坂出で生まれた”日本一、紅いみかん”
金時みかん(品種名:小原紅早生)は、一般の品種の温州みかんに比べて、皮や果肉の色が紅く、糖度が高いのが特徴です。
小原紅早生は、坂出市青海町にある小原幸晴さんのみかん園で、宮川早生という品種のみかんの枝変わり(枝が伸びる途中に性質が変わること)として発見されました。
何本もある木の中の、たった一枝から突然変異で見つかった”奇跡”を、地元の情熱と努力によって1つのブランドにまで育て上げ、現在の紅くて甘い小原紅早生は全国へ届けられています。
目次 / contents
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三つのDATA
味 / taste
糖度の高さはもちろん、酸味とのバランスが良く水分量も多いため、口にすると濃厚なみかんの甘さが口いっぱいに広がります。
小原紅早生は品質ごとにランクが分けられており、
糖度12.5度以上は 「さぬき紅」
糖度11.5度以上は 「金時紅」
糖度10度以上は 「小原紅」 と区分されています。
「さぬき紅」と「金時紅」が入る紅い化粧箱は、最高級品の証です。
旬 / season
坂出では、11月中旬頃に集荷が始まり、1月末頃まで流通しています。12月下旬頃に出荷の最盛期を迎えます。
歴史 / history
坂出市における温州みかんの栽培は明治時代に始まり、昭和30年代後半からは栽培面積が急速に拡大したとされています。
しかし昭和40年代になると、温州みかんは供給過剰による販売価格の低迷に直面し、全国各地でみかんの差別化商品の開発がされるようになりました。
坂出市でも同様の背景のもと、外国品種や他地域の品種の導入が始まりました。そして昭和48年、青海町の小原幸晴氏のみかん園で栽培されていた「宮川早生」の中で、一枝にだけ生っている表皮の紅いみかんが発見されます。これは、枝が伸びる途中で性質の変わる「枝代わり」という突然変異の一種で生まれたものでした。
色だけでなく、味も甘く美味しいことから、産地を担うみかんになるとの期待のもと、昭和59年には地域の生産者によるこの「紅いみかん」の栽培が開始されました。
そしてJAや香川県農業試験場も交えて調査や実験を行い、平成5年10月、香川県のオリジナル品種として品種登録されました。また平成29年12月には、「小原紅早生」が香川の財産として市場での優位性を維持することを目的に、農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に「香川小原紅早生みかん」として登録されました。
推し!情報
誕生秘話(小原紅早生)
”日本一、紅いみかん”
そう呼ばれる小原紅早生みかんは、どのように誕生したのか。
当時、地元農協の参事であり、小原紅早生誕生に深く関わった一人である、松下良夫さんにお話をお伺いしました。
-小原紅早生が誕生するにあたっては、どういった背景があったのか教えてください。
小原紅早生の誕生をお話する前に、当時のみかん生産の背景をお伝えしましょうか。
終戦後、全国各地で多くの人々が仕事や食糧を求めて農村に向かい、たくさんの農地が開墾されていきました。なかでも、特に広がっていったのはみかん畑です。当時は輸送時間が長くかかっていたこともあり、より日持ちしやすい温州みかんは重宝されたんです。
坂出市においても、瀬戸内の温暖な気候がみかん栽培に適していたこともあり、昭和30年代後半以降、温州みかんの栽培が急速に拡大していきました。
しかし昭和47年(1972年)、高値であったはずの温州みかんの価格が暴落します。全国的な生産過剰と、輸送時間の短縮に伴う他種果実の消費拡大が原因と思われます。
この価格暴落に対応するため、全国の産地で差別化商品の開発、品種改良が行われるようになりました。坂出市でも例に漏れず、例えばアメリカから「アンコール」という見た目の赤い品種の導入も行いましたが、栽培方法の違いなどもあり、なかなかうまくいきませんでした。
そんな中です。昭和48年(1973年)に坂出市松山地区の一つである青海町の故・小原幸晴さんが、自身の「宮川早生」という品種の温州みかんが60本程植わっているみかん園の中で、一本の木の頂上の、たった一枝に実った紅いみかんを発見したんです。
その紅いみかんは、植えていた宮川早生の枝代わりでした。枝代わりとは、枝が伸びていく途中でその性質が偶発的に変わること、つまり突然変異の一種です。
-なるほど、誕生にはそういった背景があったのですか。しかし小原紅早生は、すごい偶然から生まれたのですね。
そうですね。しかしこれではまだ誕生とは言えません。大変だったのはむしろここからでした。品種として登録するには、一定以上の量を生産することはもちろん、何せ全国的に品種改良が行われていたものですから、ひとえに紅い色のみかんといっても、他の地区でも同様の特徴のみかんは存在しており、その中で「紅さ」でも「甘さ」でも、何か他のみかんにも埋もれない、差別化を図れるような特長が必要だったんです。
そのため、松山地区内の試験地に接ぎ木をして生産量を増やしていくとともに、農業試験場に紅い果実を持ち込み、検査・栽培実験を何度も何度も繰り返して、特性調査を続けました。
すると昭和60年(1985年)、発見者である小原幸晴さんが、紅いみかん5つを、当時松山農協(現JA香川県松山支店)の参事であった私のもとに持ってきたんです。
私はそのみかんを机に入れていたのですが、ひと月後、机に入れた時よりもみかんの紅色がすごく濃くなっていたんです。1個食べてみると、とても甘く、おいしい、まさに「素晴らしい味」でした。糖度を調べると、なんと13度もありました。
「お金がいくらかかっても、これをものにせないかん。将来的には、産地を担うみかんになる。」私はこう直感したんです。
-当時の大変な状況も、そして松下さんのみかんに対する熱い気持ちもよく伝わってきます。
発見者の小原幸晴さんは松下さんのもとに紅いみかんを持ち込んだと仰いましたが、小原さんと松下さんは普段から関わりがあったのですか。
そうですね。彼は私の一歳年下で、私は地元農協の職員、彼はみかん農家という間柄もあって、普段からよく話をしていました。
平成5年(1993年)10月13日、紅いみかんは「小原紅早生」という名前で品種登録されたのですが、この「小原紅早生」という名前の由来はご存じですか。
-小原さんが発見したから、その名前をいれて「小原紅早生」でしたよね。
そうですね。実はこの「小原紅早生」という名前を付ける際、つまり品種を登録するとなった際に、私は彼と「『小原』という名前は残すから、その他の名前や登録の手続きは農協に任せてくれないか。」といったやり取りをした記憶があります。
初めて彼が紅いみかんを発見してから、実に20年後のことでした。
-長い年月を経て、今私たちが食べている奇跡の紅いみかんが生まれたんですね。
「奇跡」と言うと、少し違うのかもしれません。確かに、発見されたのは突然変異という奇跡でした。しかし、それだけではブランド品種にまでは至りません。
発見後の品種改良にかける地元農家の方々の情熱と努力は勿論、松山地区がブランド品の産地として、誰か一人ではなく産地全体で品質向上に取り組んできたからこそ、小原紅早生というブランド品種が誕生したのです。
みかんの選果(ランク分け)
小原紅早生の選果は、JA香川県坂出みかん共撰場内にある選果機によって自動で行われます。
ランク分けのもとになる「糖度」の判別には、みかんを一切傷つけることのない光センサーを活用しています。
(1)集荷
各農家から出荷されたみかんを、コンテナごと選果ラインに乗せます。
この時、農家は自家の家庭選別で規格外果(大きさの規格に満たないもの、病害虫被害果や腐敗果など)を選果したうえで持ちこまれます。
(2)洗浄・選別
選果ラインに乗ったコンテナは、隣の選果場に移り、ダンパーによってみかんがコンテナから取り出されます。
その後、みかんは機械内部に入り、水で洗浄、ブラッシングされ、ファンで乾燥されたのち、(3)の選果を迎えます。
洗浄の前後では、手作業によって腐敗果、汚損果など、生食として認められないみかんが選別されます。
(3)選果
(2)の工程で洗浄・選別されたみかんは、光センサー式の選果機により、果実が傷つけられることなく選果されます。
この際に、大きさ、傷の有無、色合いの評価、糖度、酸度が、1秒に約4個のスピードでデータ化されます。
こうして選果機を通ったみかんは、レーン上のみかんが乗っている部品にデータが記録されることで、指定のランクのレーンに排出されます。
(4)箱詰
(3)で選果されレーンに乗ったみかんは、自動で箱詰めされ、指定の重量に達すれば自動で排出され、コンベアに乗せられます。
その後、計量機と目視によって、エラーチェックと指定の重量への調整が行われます。
そしてチェックが完了したみかん箱は、機械で封緘(蓋をしめること)後、各ランクの箱ごとに集積され、出荷されていきます。
見て知る分かる
子ども向けチラシ
小原紅早生の生産量や特徴について、グラフや写真を用いてさかいでまろが説明するチラシです。
対象は、小学校3年生以上を想定しています。
広報さかいで12月号
広報さかいで12月号(令和5年)
小原紅早生の誕生秘話や、地元農家の声、坂出市内におけるお買い求め先など、小原紅早生に関する様々な情報を広報誌巻頭6ページに渡って紹介しています。
関連動画
さかいでさんぽ 青海町編(坂出市公式YouTube)
小原紅早生みかんの発祥地である、坂出市青海町の様々な場所をめぐった動画です。(公開日:2024年1月22日)
動画内の 0:42 ~2:50の部分で、小原紅早生みかんの栽培されている園地や色の特徴が、地元農家によって分かりやすく紹介されています。