サヌカイト(カンカン石)
サヌカイトの生成と特徴
坂出市東部にある五色台及びその付近の山頂には,古来から讃岐の名石「カンカン石」として親しまれてきたサヌカイトが産出します。和名を「讃岐岩」といい,たたくと「カーン,カーン」金属音を発し,心地よい余韻を残して響きます。人々は,この岩石を江戸時代のころから「馨石」(けいせき)とも呼び親しんできました。
サヌカイトは,この五色台や屋島をはじめとする本県北部地域に広く分布する古銅輝石安山岩の一種で,瀬戸内地域に起こった火山活動によってマグマが地表に流出し,冷え固まってできた岩石です。
サヌカイトとその類縁岩石は,紀伊半島中部から本県を経て,九州北部までの分布を示し,大阪府の二上山には香川県に分布するものとよく似た岩石が見られます。
この岩石を含め,一連の火山活動にともなう火山岩類及び淡水性の堆積物は,香川の旧名「讃岐」をとって,讃岐層群と呼ばれ,県内全域にわたって分布しています。本層群の模式的な重なり方は,国分寺町東奥から国分台の山頂に通じる遍路道沿いの崖にみることができ,下部より基盤の花崗岩の浸食面上に凝灰角れき岩,その上に火山角れき岩,讃岐岩質安山岩(古銅輝石安山岩でサヌカイトとよく似た岩石),そして,サヌカイトの順に岩石が重なっています。
讃岐層群の時代については,次のように考えられています。すなわち,小豆島の土庄町滝宮で,讃岐層群に属する凝灰角れき岩が土庄層群を不整合におおっていること,および屋島山上で,三豊層群の一部層(往来の屋島れき層)に,讃岐層群に属する集塊岩層が不整合におおわれていること,さらに三豊層群中に,讃岐層群に属する各種火山岩類のれきがみられること,以上のことなどから讃岐層群は,土庄層群(初期~中期中新世)以降から三豊層群(後期鮮新世~更新世)以前,すなわち,第三紀後期中新世に属するものと考えられます。
石器としての利用
人類がこの地球上に初めてその姿を現したのは約250万年前とされていますが,現在の香川県での人類の足跡は約3万年前にさかのぼります。
この頃からサヌカイトは道具として使われはじめ,弥生時代の終わり頃の約1700年前まで,主に物を切ったりする刃物として盛んに活用されています。
3万年前から1万年前までは旧石器時代と呼ばれていますが,この時代の遺跡が瀬戸大橋建設に伴って多数発掘調査されました。調査結果によれば,与島西方遺跡では約13万点,羽佐島遺跡では約35万点を数える膨大な数の石器やその破片が出土しましたが,石の種類を調べてみますと,全体の98%近くがサヌカイトを材料にするものでありました。
サヌカイト以外では,安山岩,黒曜石,流紋岩,水晶などが出土していますが,北海道,関東,九州地方で石器として多く利用されている黒曜石は数十点と少なく,原産地が近くにあり,しかも割れると鋭い縁をもつサヌカイトが石器に適しており,盛んに使われた様子がうかがえます。
サヌカイトが石器に多く利用される傾向は,次の縄文時代や弥生時代になっても変わっていません。
各山のサヌカイトの種類
蓮光寺山のサヌカイト
かつお節状風化
城山のサヌカイト
金山のサヌカイト
国分台のサヌカイト
朽ち木状風化