ぶんぶんレポ「文化財の拓本を取る」をレポート!
「拓本」という言葉を、みなさんは聞いたことがありますか?
耳慣れない言葉かもしれませんが、「魚拓」なら知っている人もいるのではないでしょうか。
「拓本」とは、文字や模様の凹凸を紙に浮き立たせる方法で、魚拓もその一つです。また「拓本」の起源は古く、中国の唐の時代より前から始まったと考えられるそうです。
ところで坂出市京町、県道33号線沿いの菅原神社の境内に「阪出墾田之碑(さかいでこんでんのひ)」という屋根つきの大きな石碑があります。これは坂出市の有形文化財にも指定されている貴重なものです。
今回、この墾田之碑の拓本を取りに、県外から日本拓本家協会の二名の方(河合さん、大橋さん)が来られました。(※神社、教育委員会ともに許可を受けています)お二人は全国にあるいろいろな石碑を拓本収集されているとのことで、様子を見に行くとともに、拓本の作業工程をじっくりと見学させて頂きました。
せっかくですので今回はこれをレポートしたいと思います。
阪出墾田之碑の拓本
(1)石碑を掃除してきれいにした後、画仙紙(書道などにつかう紙)を貼り付けていきます。
(石碑はタテ2m14cm、横1m35cmの大きさのため、画仙紙も特注のものだそうです)
ここでまずびっくり!
なんと水だけで貼り付けていきます。
霧吹きの水とハケだけで湿らせながら貼り付けていて、すぐ剥がれるのではと心配しましたが、ハケで空気を追い出しながら押しつけると大丈夫なのだそうです。(補助的にテープを使うことはあります。)
ちなみに河合さんは鹿の夏毛でつくったハケを使用されていました。
たしかに、ぴったりくっついています。
(2)オーガンジー(薄手の地の透けて見える織物)をかけ、今度は「しろわけ」と呼ばれるシュロの繊維で編んだハケで中心から外へ空気の泡を追い出していきます。
(3)水分が7~8割程度乾いてきたら今度はブラシ(馬の尻尾の毛だそうです)に手ぬぐいを巻きつけ、叩いていきます。
文字がくっきり浮かびあがってきました。紙に対して直角に叩くのがコツだそうです。
(4)タンポ(丸めた綿を薄手の絹で包んだもの)に墨をつけ、上からポンポンと叩いていきます。
何度も叩くことによって、文字がどんどん浮かびあがってきました。
(タンポも墨も何種類かあって、すべて手づくりです)
簡単に紹介しましたが、すべて体力と根気の必要な作業です。
この日は気温も高く、汗を流しながらの拓本取りに見学しながら感心するばかりでした。
完成です。
写真では分かりづらいですが、一つ一つの漢字がくっきりと墨で浮かびあがっています。
江戸時代後期、久米通賢の坂出墾田により、当時としては比類なき大きさの坂出塩田が築かれて以降、坂出は上質な塩の生産地として栄えてきました。
この墾田之碑は第9代高松藩主松平頼恕公が通賢の功績をたたえ、日本一と称された書家と江戸の有名な石大工につくらせたものです。
坂出墾田の東西の中心に建ち、塩づくりにより発展してきた坂出の象徴ともいえるこの石碑。
この石碑の拓本が県外で大切に保管されることを嬉しく思います。
番外編
空いた時間で、拓本にチャレンジさせていただきました。
そばにあった玉垣の文字がターゲットです。
コツをお聞きしたところ
「ハケの使い方」
「手ぬぐいの使い方」
「スプレーの水の量」 とのこと。 聞けば簡単そうなのですが・・・
水が足りずに途中ではがれたり、こまかい所が打ちこめなかったり、紙をやぶいてしまったり・・・。
(「濱」の漢字、分かるでしょうか)
先生の手直しもあって、なんとかようやく完成です。
いろんなコツがたくさんあって、マスターするのは一朝一夕ならずと痛感しました。
拓本の方法は、これ以外にも色々ありますが、誰しもやったことがあるであろう「硬貨をノートの下に敷き、上から鉛筆でこすることで、模様を浮かび上がらせる」なんていうのも、立派な拓本の一つだそうです。
身近なところからスタートして、いずれは、大きな石碑の拓本を目標にしたいと思います。