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第三章:暗黒世界からの脱出路・・・足下を照らす火を熾せ!

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年3月1日更新

病院基本理念の設定 関連リンク→基本理念

基本理念へ 職員意識調査の基本的問題事項の第一項にあげたように、病院には基本理念が定められていなかった。病院が生き残るためには医療人としての情熱を結集できる土壌を作り、そして全職員がひとつの方向を目指し共通の理念や価値観をもって行動することが重要である。
 市立病院には住民の健康な生活を守るという市の医療施策を実現するための中心的な担い手としての使命があり、さらには将来的に地域全体の医療・保険・福祉の一元化を見据えた良質で効率的な医療システムを構築するための先導的役割を果たして行くことが必要である。これらを意図する三つの理念を掲げ、「市民が安心して暮らせ、心の支えとなる病院に」を目指すことにした

「かわらなきゃ」のきっかけ

 病院低迷の元凶であり、盲目的に受け継がれてきた日常性への埋没から職員の目を醒まさせることが暗黒世界からの脱出の突破口であると考えた。新たな日常性の構築「かわらなきゃ」である。変わるためには、何らかのきっかけが必要である。自治省から病院の廃止を示唆されたこと、新聞やテレビなどのマスコミに瀕死の重体と騒がれたこと、市民(議会)から税金泥棒と非難されたことなど、そして決定的であったのは、優しくなんでも聞いてくれる院長から鬼に徹する院長に交代したことなど、条件は十二分に揃い、機は熟していた。
 「かわらなきゃ」の前頭語にいわゆる5W1H:when(いつ)・where(どこで)・who(だれが)・what(なにを)・why(なぜ)・how(いかに)、を置き、いつ「かわらなきゃ」いけないのか、今日からなのか、明日からなのか、一ヶ月後からか、一年後なのか、などと具体的に目標設定を行った

職員の意識覚醒~当たり前を当たり前に~

パラダイムシフトへジャンプします 左図は「かわらなきゃ」の過程を示したものである。意識不明に陥っていた市立病院を社会復帰させるには、まず意識レベルを回復させることが必要であった。例えば、病院基本理念の存在を「知っている」ことが意識の覚醒の第一歩となる。知らない職員には院長として周知徹底させた。次に、基本理念を「わかっている」こと、例えば病院の果たすべき役割や自分の本来なすべき仕事について具体的に理解できていることであり、これをクリアできれば意識は覚醒したことになる。次の段階は実行すなわち「できる」ことである。実行とは個人や所属する部署のためではなく、病院全体の理念の達成、ひいては患者や地域住民のための実行である。この「できる」は努力してやっとできるのではなく、「当たり前にできる」ようになることが理想である。
 その結果、リエンジニアリング、最終的には既成概念の変革が図られ、日常的かつ盲目的になされてきた業務の根本からの見直し・やり直し、すなわち「パラダイムシフト」につながるのである

「かわらなきゃ」のしかけ

 きっかけによって「かわらなきゃ」と覚醒し、活動を開始始めた個人や組織をいかに支援するかは院長としての重要な責務である。
 支援とは明確かつ具体的かつ達成可能な目標の設定であり、目標達成のための合目的なシステム作りである。

(1)年次目標と年次報告

 基本理念達成のための病院年度目標を設定し、それとの整合性を持つことを原則とし、医師をはじめとしたすべての職種にも部門年度目標を定めさせ、その発表会を開催している。年度上半期が経過した時点では、院長を交えて各部門目標の見直しを行い、下半期への課題とするのである。年度末には、

  1. 業務の概況・実績
  2. 運営上の問題点と課題および目標の達成と評価
  3. 生じた問題点・課題への取り組み
  4. 新たな取り組みなどの報告書の様式を統一し、年次報告会を行っている。このシステムは、各人・各部門がその業務や役割を見つめ直し、新たな日常性を構築することに役立っている。無関心な存在であったほかの部署が、何を考え、どんな業務をこなし、自分の部署ひいては病院にいかに貢献しているのかを理解する良い機会にもなっている。96年度の病院目標をすべて達成できたことで、院長と職員の信頼感は一層深まり、彼等に自信と誇りとやる気が生まれ、次年度目標達成へ向けての大きな活力となっている。

(2)予算編成

院長、医師、事務局を交えた予算編成風景 全員参加による病院経営を考えるとき、医療職が関与しない予算編成は問題である。第三次経営健全化計画も当然、事務局だけで作成され、医師をはじめとした医療職にその内容は周知されず、年度収支決算さえ開示されていなかった。まさに医療と経営が完全に分離していたのである。だから赤字が生じても放置されていたのである。長い時間と大変な労力をかけ事務局が作成する毎年の予算は、病院自体のためではなく議会のためにあったのである。それを病院のものとして取り戻すためには医療職の予算編成への参画が必要である。
 毎年12月、各診療科に目標とする患者数および行為別診療単価を外来・入院別に提出させ、各科医師と院長とで調整し、お互いが納得した上で目標値を定めている。各診療科の目標値を合計すれば、それがそのまま次年度の医業収益の予定額となる。これは事務局の労力の軽減のみならず、医師の経営参画意識の醸成にもつながる。さらには、医師にとっては目標を達成するために次年度はどのような方針でどのような医療を行うかを考える絶好の機会となり、院長にとっても診療科の方向性を共に考え、模索していけるという利点となる。また、実績に対する評価も大切であり、単に目標に対し、実績が上回ったとか下回ったとかではなく、そこから課題や問題点を見つけだし改善することに意味がある。

(3)トータルオーダリングシステムの導入

オーダリング委員会の風景 業務の効率化はいつの時代でも変わらぬ命題である。病院運営全体の効率化・円滑化を図るひとつの手段としてトータルオーダリングシステムを導入した。診療行為を医師や看護婦等による発生源入力とし、情報を関連部署で共有し、かつ自動的にレセプトに反映させる方式である。その結果、伝票の転記や搬送作業など無駄な業務量が減少した。経済的な効果として、医事業務委託料や正規職員の時間外勤務手当が約25%減少し、また、従来少なからずあった転記ミス等による診療報酬請求漏れも少なくなった。職員意識の改革にも役立ち、導入を景気に日常業務の面でも各種待ち時間が短縮され、看護ケアも一層充実した。それまで、当院を視察に来る病院は皆無であったが、導入以来多数の施設が見学に訪れ、職員の誇りにもなっている。今後は電子カルテや画像伝送にも視野に入れ、地域医療施設との連携強化や情報公開にまで発展させたいと考えている。


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