令和5年度 坂出市立病院 病院情報の公表

病院指標

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)

医療の質指標

  1. リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率
  2. 血液培養2セット実施率
  3. 広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率
年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 320 115 64 97 154 363 571 1360 1010 267
当院は、地域の中核病院として幅広い年齢層の患者さんに急性期医療を提供しております。
特に、がん、循環器、呼吸器を中心とした診療をしていることから60代以上の患者さんの割合が多い傾向にあります。
コロナ以前は、小児の患者さんへの感染症に対する入院治療を行っていたことから、10歳未満の患者さんの割合も比較的高く約15%を占めておりましたがコロナ禍での受診控え、感染対策の拡充、小児病床の受入れ中止により一旦、入院患者の5%にまで落ち込みました。
しかし、令和5年度には10%まで戻りました。
また、60代以上の患者さんは全体の73%、90歳以上の超高齢者についても6%を占め、地方の高齢化を反映したものとなっています。
平均年齢は65.9歳となっており、小児科を除いた平均年齢は71.0歳となりました。
上記の結果はコロナの入院患者を含めており、それを除くと小児の減少による平均年齢の上昇が認められました。
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030250xx991xxx 睡眠時無呼吸 65 2.00 2.03 0.00 59.45
050130xx9900x0 心不全 52 14.96 17.38 3.85 83.96
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 50 7.62 8.75 2.00 75.94
130030xx99x9xx 非ホジキンリンパ腫 49 16.29 12.88 2.04 75.59
050050xx9910x0 狭心症、慢性虚血性心疾患 47 2.19 3.05 2.13 68.60
睡眠時無呼吸症候群とは、気道の閉塞などが原因で睡眠中に何回も呼吸が止まる病気です。いびきや日中の眠気などの症状がある場合、ポリソムノグラフィー(PSG)検査を1泊2日での入院にて診断を行っています。検査の結果、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群と診断されれば、鼻マスクによる持続陽圧療法(CPAP)を導入しています。当院では、最新の治療器及びマスクを各種取り揃えており、より適した治療方法を選ぶことが出来ます。
心不全は、地域の医療機関・施設より紹介され救急外来受診される患者さんが多くなっております。また平均年齢が84歳と高齢になっております。薬物治療に加え、平均して入院1週間以内に心臓リハビリテーションを行い、また近隣の病院とも連携して早期の退院に向け取り組んでいます。
胆・膵領域では、急性胆管炎の患者が多くなっております。救急疾患であり、黄疸や腹痛、炎症が強い場合には迅速な処置を施さなければ生命に危機を及ぼす疾患です。休日、夜間でも内視鏡治療が実施できるよう、医師・看護師・技師が24時間体制で対応しております。また当院では、他の施設で発症した胆管炎も積極的に受け入れております。
血液内科では、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)に対する化学療法入院が多数を占めています。急性白血病、骨髄異形成症候群に対する化学療法入院も行っており、クリーンルームも備えております。化学療法を始めると骨髄抑制がおき、感染しやすくなりますが、血液内科病棟では特に慎重な感染対策を実施しております。また、中西讃地域および隣県の四国中央市には成人の血液内科診療が可能な医療機関が少なく、その中心的存在として日々、診療を行っております。
第5位となった狭心症については、治療ではなくカテーテル検査によるものとなっています。この疾患は動脈硬化に由来し高齢化と生活の欧米化に伴い、年々、増加しています。当院では、週2回の検査日に加えて緊急カテーテル検査・治療に対応できる体制を整えています。令和元年度に最新の血管撮影装置に更新いたしました。
小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎 136 3.24 5.64 0.00 4.42
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 65 4.08 5.96 0.00 2.18
040070xxxxx0xx インフルエンザ、ウイルス性肺炎 31 3.52 5.86 3.23 7.29
030270xxxxxxxx 上気道炎 30 3.80 4.72 0.00 5.13
030240xx99xxxx 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 14 4.07 5.51 0.00 4.43
新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行した令和5年度についてもコロナ診療は継続して行われ患者ゼロとなる日は無く診療継続しております。そのため、小児の新型コロナウイルス感染症については比較的軽症であることから自宅療養を基本とし入院については成人の診療を中心に実施しております。新型コロナウイルス対策で感染対策が充実したことにより例年流行がみられる感染症の罹患患者が極端に減少し、その結果、各種感染症の抗体保有者が全年齢で低下しました(免疫を持たない子どもさんの増加)。今年度の小児科の症例動向としては、コロナ禍以前の通り、感染症による胃腸炎、気管支炎がそれを占めるものとなりました。脱コロナで通常診療へ移行としましたが、患者数はコロナ禍以前の約半数に留まっています。
中等症までの食物アレルギー診断のための経口食物負荷試験や低身長に対する内分泌負荷試験も日帰り入院にて実施しております。小児科外来でご相談ください。
外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上) 52 5.67 4.55 0.00 72.15
060335xx02000x 胆嚢炎等 41 7.71 6.87 2.44 64.78
060035xx99x6xx 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 28 6.11 4.42 0.00 54.11
060040xx99x70x 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 28 4.25 4.38 0.00 72.93
060150xx03xxxx 虫垂炎 26 6.38 5.29 0.00 46.35
平成30年4月にヘルニア外来を設置したことで、患者さんが受診しやすくなり、患者数が多くなっております。日帰り手術は実施しておりませんが、腹腔鏡による短期入院による手術も可能です。
手術による治療を行う胆嚢炎等が上位疾患となり、胆のう水腫、胆嚢炎に対する胆嚢摘出を行っています。患者さんの状態に応じて腹腔鏡手術と開腹手術を選択しています。現在9割以上の患者さんで腹腔鏡下の手術が実施されており、早期に社会復帰できるよう努めております。第5位の虫垂炎も同様に9割以上で腹腔鏡下手術が実施されており、患者さんの身体への負担軽減に努めております。
第3位の結腸および直腸肛門の悪性腫瘍に対しては、抗悪性腫瘍剤(抗癌剤)による治療が実施されております。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx01xxxx 股関節・大腿近位の骨折 91 28.08 25.50 54.95 84.07
160760xx97xx0x 前腕の骨折 39 9.82 4.76 0.00 62.00
160780xx97xx0x 手関節周辺の骨折・脱臼 34 5.56 4.04 0.00 30.38
160690xx99xxxx 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 31 14.26 19.34 64.52 82.48
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。) 29 29.21 19.55 0.00 70.83
地域の高齢化を反映して、自宅や施設等で転倒後痛みを訴え受診される患者さんが増えています。
大腿の骨折は、手術療法で対応しております。骨折後の骨粗鬆症の評価・治療は再発予防に重要であることから、ほぼ全例の患者さんに骨粗鬆症への介入をおこなっております。また、手術療法は早期に実施するほどその後の経過が良好であると言われています。約半数の患者さんに「緊急整復固定加算」を算定し術後の経過をより良いものへと努めております。当院での長期の入院によるリハビリテーションは困難なため、必要に応じて継続して治療が行えるよう転院調整を実施し、令和5年度は他院への紹介転院が約6割となっています。
前腕や手関節の骨折も転倒に伴い発生することが多くなっております。入院ではほぼ全例で手術が実施されます。在院日数は平均して約7日と他の部位の骨折と比較して短くなっております。
胸や腰の骨折は保存療法で入院安静となっています。コルセット着用で歩行器歩行が安定した時点で入院リハビリ継続のため転院する患者さんの割合が約7割と高くなっております。
呼吸器外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍 38 10.00 9.89 0.00 75.53
040200xx01x00x 気胸 16 9.06 9.54 0.00 30.63
040200xx99x00x 気胸 11 12.73 9.17 9.09 64.09
令和5年度、肺癌に対する手術を39件施行し、全ての患者さんに対し胸腔鏡下で施行しました。安全な手術を第一に考え、患者さんの病態に沿った形で開胸、胸腔鏡下の選択を実施しております。胸腔鏡下での手術は患者さんへの負担も少なく在院日数も平均して10日と短くなっています。
この他にも、気胸に対する胸腔鏡下手術、縦隔疾患に対する手術、手掌多汗症に対する胸腔鏡下交感神経切断手術など幅広い疾患に対する治療を行っています。
耳鼻咽喉科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030230xxxxxxxx 扁桃、アデノイドの慢性疾患 22 8.00 7.53 0.00 8.50
030320xxxxxxxx 鼻中隔弯曲症 19 6.00 5.80 0.00 33.53
扁桃肥大、鼻中隔弯曲症、慢性副鼻腔炎に対して手術療法を行っております。
扁桃肥大に対する手術は、小児の患者さんが中心で平均年齢9歳となっており、現在、全身麻酔下で手術を実施し約1週間の入院期間となっております。
耳鼻咽喉科疾患全般(耳・鼻・のど・頸部・顔面)を取り扱っており、重症度に応じて手術や入院治療を勧めさせていただいております。
ほとんどの疾患が当院で診断可能ですが、悪性腫瘍などの特殊な治療が必要な疾患につきましては、適切な施設を紹介させていただいております。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍 59 2.10 2.44 0.00 72.29
11012xxx02xx0x 上部尿路疾患 45 4.09 5.22 2.22 68.49
110200xx02xxxx 前立腺肥大症等 22 7.18 7.75 0.00 74.18
110070xx02xxxx 膀胱腫瘍 14 6.14 6.78 0.00 74.00
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍 13 6.92 6.85 0.00 76.15
前立腺の悪性腫瘍が取扱い第1位となっております。腫瘍マーカー検査で異常を指摘された患者さんに対して、入院で前立腺がんの疑いで針生検を実施しています。
尿路結石および前立腺肥大等の良性疾患に対して、経尿道的な手術を実施しております。令和2年度、前立腺肥大症に対して以前から実施していた経尿道的な手術に加えて、レーザー光を利用した“HoLEP”という最新の手術法を導入しました。レーザー光による手術のためメスを使わないことで痛みが少なく、術後の回復が早いため入院期間が短いというメリットがあります。
膀胱がんの患者さんに対しては、経尿道的に手術を実施して、組織確認を行います。筋層非浸潤性膀胱癌については、再発防止の目的で術後抗癌剤(ピラルビシン)を膀胱内に注入しています。
平成31年4月に保険導入となった過活動膀胱に対する「ボトックス膀胱壁内注入療法」を当院でも令和2年度導入しました。ボトックスを膀胱壁内に注射することで筋弛緩作用を示し、過活動膀胱による様々な症状(尿意切迫感、頻尿、尿失禁)を改善するといわれています。飲み薬で症状が改善しない方がボトックス治療の適応になります。基本的には外来で実施となりますが、必要に応じて入院でも対応いたします。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 20 2 13 38 3 4 1 8
大腸癌 23 12 22 41 0 49 1 7,8
乳癌 0 0 0 1 0 0 1 7
肺癌 32 6 41 77 4 25 1 6,8
肝癌 1 3 1 1 1 3 1 8
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
現在、日本で患者数の最も多い5つのがんを5大がんといいます。
令和4年度の病期(ステージ)ごとの診療実績を集計しました。再発症例については症例数のみ集計しています。
当院でのがん治療の患者数は、肺がん、大腸がん、胃がんの順となっています。
肺がんについては、StageⅠの早期がんに対して胸腔鏡下の手術施行例が一定数ある一方で、Ⅳ期で診断・治療となる症例や再発治療も多くなっており、手術や抗がん剤治療、患者さんの病状に応じた治療を選択し実施しております。
大腸がんは現在日本で男女併せて最も多く発生しているがんとなり、当院でも多く取り扱っている癌腫です。昨年、一昨年とStageⅣの患者数が約40~50%を占め、コロナによる受診控え、健診控えの影響を反映した結果となりました。今年度については約27%と検査数も例年並みに回復したことから病期の患者割合については平時に戻ったことが分かります。
胃がんでは、内視鏡(カメラ)による早期発見、早期治療が行われているためStageⅠの患者数が例年なら30%を超えておりました。しかし、コロナによる受診控え、健診控えの影響が若干残っており、例年並みとはならず未だ30%を切っています。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、内視鏡的粘膜剥離術(EMR)など内視鏡治療の件数は、コロナ前の約80%までは回復しました。
上記は、入院によるものの集計ですが、外来治療も積極的に行っており、外来化学療法室を設置しております。近年では副作用の少ない新規抗がん剤が登場してきたため初回(導入)は入院診療で実施し、外来へ移行するというケースが主流となっています。
また、患者さんが安心して治療を行うことができるよう、がん関連の認定看護師を中心に多職種がそれぞれの専門性を活かして患者さん・家族のケアに努めております。
成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 22 10.23 57.18
中等症 105 13.76 78.21
重症 49 14.86 84.02
超重症 5 9.60 76.00
不明 0 0 0
市中肺炎とは、普段の社会生活の中でかかる肺炎のことです。
この指標では、細菌による肺炎を集計しており、 インフルエンザウイルスなどのウイルス性肺炎や高齢者で多くなっている食べ物等の誤嚥による肺炎は集計対象外となっております。
当院では、中等症の患者さんが重症度別では105症例と最も多くなっております。重症度が高くなるにつれて、平均在院日数も長くなる傾向にあり、平均年齢も上昇傾向にあります。高齢者ほど重症化しやすいことが推察されます。
新型コロナの間接的な影響でその感染予防策が結果的に新型コロナ以外の気道感染を減少させ、患者さんの絶対数を減少させました。しかし、入院治療の必要な中等症以上の患者割合はおよそ90%で変化はなく、外来診療が可能な軽症の患者は様々な事情で一定数ありますが、適切な治療は実施できているものと考えます。
重症度に関わらず呼吸器使用の場合もありますが、呼吸器装着から離脱までの管理を多職種からなる呼吸器チームが中心となり行っているので安心して治療を行っていただけます。
脳梗塞の患者数等ファイルをダウンロード
発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
3日以内 3 12.00 83.33 0.00
その他 5 31.20 81.20 50.00
脳梗塞治療は特に迅速な治療開始がその後の患者さんのADL(日常生活動作)に影響を与えると言われています。
また、脳梗塞治療でのリハビリテーションは後遺症予防に非常に重要です。当院の脳梗塞患者の平均年齢は80歳を超えており、年齢的に長期臥床を防ぐためにも、発症から平均して2日までにはリハビリテーションを開始するようにしています。
院内で発生した脳梗塞に対しては、TPA(血栓溶解療法)や血管内治療などの超急性期治療は当院では実施できませんので、近隣の医療機関へ紹介転院を行うことで迅速に対応しております。
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)ファイルをダウンロード
内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 69 1.71 9.45 0.00 78.12
K654 内視鏡的消化管止血術 39 1.56 13.49 12.82 76.56
K5491 経皮的冠動脈ステント留置術(急性心筋梗塞) 31 0.00 16.19 12.90 68.39
K6871 内視鏡的乳頭拡張術 31 0.81 8.13 6.45 76.55
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 29 1.14 2.28 3.45 69.90
胆・膵領域で、がんや胆石によって黄疸や胆管炎、胆のう炎、膵炎の緊急入院が多くなっており、内視鏡的に胆道にステント留置を行っています。このような処置を早期に実施することで、その後の治療をスムーズに実施できるようになります。また、内視鏡的乳頭切開術(乳頭括約筋切開のみのもの)とは、胆管炎や胆嚢炎の要因となっている胆石に対する内視鏡的処置の一つです。ドレナージやステント留置・胆道結石除去の初回治療時に同時に行われることが多く、内視鏡下で十二指腸乳頭を切開し、結石排出のための処置具を使い総胆管結石を除去します。
2番目の術式は、消化管出血によって吐血や下血をおこされた患者さんに内視鏡的に止血を行っています。
3番目の術式は、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)に対する経皮的冠動脈ステント留置術が多くなっております。これはカテーテルを用いて狭窄部位にステント(金属)を留置して拡張します。開胸手術でないため患者さんの負担も少なく実施することができます。循環器内科ではこのような緊急性のある疾患に対応できるような体制を確保しております。
消化管領域においては、内視鏡的粘膜下層剥離術を中心に、胃・大腸、食道に生じた早期がん・ポリープに対する内視鏡的治療を積極的に行っ ています。低侵襲で入院期間も1週間程度と短期間であるのが特徴です。胃などの臓器が温存されるため、術後の食欲低下など機能障害が生じにくいことが最も大きな利点であるといえます。
外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆のう摘出 46 1.15 5.96 2.17 65.80
K6335 鼡径ヘルニア手術 33 1.27 3.21 0.00 73.06
K718-21 腹腔鏡下虫垂切除術 26 0.62 4.77 0.00 46.35
K634 腹腔鏡下鼡径ヘルニア手術<両側> 20 1.00 3.80 0.00 69.00
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 13 2.69 14.31 0.00 76.08
この集計では、胆のう炎、鼡径ヘルニア、虫垂炎に対して腹腔鏡下で手術を行っていますが、その他患者さんの病態に応じて腹腔鏡下、開腹の術式選択を実施しております。令和5年度については、鼡径ヘルニア手術が腹腔鏡下によるものを開腹によるものが上回っております。
上位を良性疾患が占めておりますが、胃癌、大腸癌、肝胆膵癌など悪性疾患についても多数の手術を行っています。
令和5年度は、結腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術が上位症例として現れています。
入院にあたっては外科医師全員が主治医となるグループ診療を行っています。どの医師にでもお気軽にご相談いただける体制となっており安心して入院生活をお送りいただけるものと考えています。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術(上腕) 63 2.11 24.27 49.21 83.37
K0811 人工骨頭挿入術(股) 55 2.84 23.11 45.45 80.16
K0462 骨折観血的手術(前腕) 42 2.76 18.48 2.38 63.40
K0483 骨内異物(挿入物を含む)除去術(前腕) 41 1.20 3.39 0.00 61.98
K0821 人工関節置換術(膝) 34 1.18 24.09 0.00 73.03
地域の高齢化を反映して、転倒による骨折等の外傷の手術症例が多く、四肢骨折の観血的手術で件数が多くなっています。下腿の骨折に対しては、骨折部位を開いて整復と固定を行ったり、骨折によって骨頭が壊れ、骨頭の保存が難しい場合には人工骨頭の挿入を行っています。
手の外科専門医が在籍しており毎年、骨折観血的手術(前腕)が上位になっています。治療のための手術とその際に挿入したプレートを抜釘する骨内異物(挿入物)除去術(前腕)が上位術式としてあがっております。
また、重度の変形性股関節症、変形性膝関節症に対して人工関節を挿入する手術を実施しており、患者さんの年齢、活動性、骨形態などを検討し、最適な人工関節や手術方法を決定しています。
呼吸器外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K514-23 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 18 1.00 7.94 0.00 72.28
K5131 胸腔鏡下肺のう胞切除 15 3.33 4.13 0.00 31.07
K514-21 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 15 1.40 6.93 0.00 79.27
令和5年度、肺癌の手術を39件施行し、全例を胸腔鏡下で施行しております。安全な手術を第一に考え、患者さんの病態に沿った形で開胸、胸腔鏡下の選択を実施しております。胸腔鏡下での手術は患者さんへの負担も少なく在院日数も平均して10日と短くなっています。
2番目となっている胸腔鏡下肺のう胞切除術は、気胸に対する標準的な治療です。気胸とは、肺がパンクして縮んでしまう病気で、胸痛・呼吸苦などが突然出現します。
初期治療を胸腔ドレナージといって、胸の中にチューブを入れ、肺から漏れた空気を排出して肺の拡張を図ります。原因となった肺嚢胞に対しては治療を行っていませんので約半数で再発します。
繰り返し発症してしまう場合や、再発予防に対して、肺嚢胞の切除もしくは縫縮を実施します。肺切除に関しては胸腔鏡下で実施しています。
耳鼻咽喉科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K347 鼻中隔矯正 19 1.00 4.00 0.00 33.53
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 15 1.00 6.00 0.00 9.93
扁桃肥大、鼻中隔弯曲症、中耳炎、慢性副鼻腔炎に対して手術療法を行っております。
耳鼻咽喉科疾患全般を取り扱っており重症度に応じて手術や入院治療を勧めさせていただきます。
ほとんどの疾患が診断可能ですが、悪性腫瘍などの特殊な治療が必要な疾患につきましては、適切な施設を紹介させて頂いております。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7811 経尿道的尿路結石除去術<尿管> 46 1.35 1.98 2.17 68.63
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術) 38 1.42 3.61 0.00 76.08
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 24 1.00 7.17 8.33 65.88
K841-21 経尿道的レーザー前立腺切除・蒸散術(ホルミウムレーザー等使用) 20 1.25 4.95 0.00 73.70
K841-6 経尿道的前立腺吊上術(経尿道的水蒸気治療) 12 1.08 3.50 0.00 81.92
経尿道的に膀胱がん、尿路結石、前立腺がんに対して手術を行っています。
尿路結石症に対する治療は、最新のレーザー破砕装置を取り入れ、従来では困難であった上部尿路に対する経尿道的内視鏡手術治療を実践しています。
膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用)は、尿道から膀胱に内視鏡を挿入し、その先端に付いている電気メスで膀胱内の腫瘍を切除します。
3番目の経尿道的尿管ステント留置術は、尿管が腫瘍や結石など何らかの原因で狭くなったものに対し、尿管ステントを留置します。
4番目・5番目に前立腺肥大症の治療として、肥大部をレーザー切除する経尿道的ホルミニウムレーザー(HoLEP)と呼ばれる手術、経尿道的前立腺吊上術(ウロリフト・水蒸気治療)を実施しております。従来の切除術と比べると低侵襲で出血が少なく患者さんに負担の少ない手術がおこなえます。それぞれの術式に有利不利があり、患者さんの希望を伺いながら個々の患者さんに応じた手術の提案をさせて頂いております。
手術件数上位とはなっていませんが、女性の尿失禁に対する薬物および手術治療や、夜尿症などの一部の小児泌尿器科疾患の治療も行っています。
泌尿器科疾患は、腎臓内科や婦人科との関連する疾患も多くあります。当院では、必要に応じて院内はもちろん、周辺の他の医療機関とも可能な限りの連携を取り、市民の皆さんが安心して受診いただけるように努力します。
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 9 0.21
異なる 14 0.32
180010 敗血症 同一 52 1.20
異なる 11 0.25
180035 その他の真菌感染症 同一 1 0.02
異なる 1 0.02
180040 手術・処置等の合併症 同一 20 0.46
異なる 0 0.00
入院契機が『同一』とは、感染症や合併症の治療を目的として入院されたことを示し、入院契機が『異なる』とは、他の治療目的で入院し たものの、入院中に感染症や合併症の治療が主な治療目的となったことを示しています。
血液の凝固に異常をおこす疾患で播種性血管内凝固症候群(DIC)というものがあります。これは症候群であり病名ではありません。そのため基礎疾患があり、それに伴い発症します。
入院時すでにDICであった患者は40%、残り60%は入院時は原疾患に対する治療を行っていたという結果になっています。入院契機疾患は悪性腫瘍(血液含む)や胆管炎等の腹腔内感染で多く、その原疾患に伴い入院後発症したものが多くなっています。
様々な感染症から血液に病原菌が入り敗血症になることがありますが、入院時すでに敗血症の患者さんが83%で残り17%が入院契機疾患は急性腎盂腎炎や急性胆管炎、化学療法中の易感染の患者さんとなっています。
抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対する防御能が低下している人は、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。
当院の手術・処置等の合併症は、今年度は全例が退院後に術後・処置後感染や出血を発症したもので、元の疾患に対しての治療は終了した後の合併症の発症となっております。
リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率ファイルをダウンロード
肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
470 441 93.83
肺血栓塞栓症とは、血栓が肺動脈につまることで発症します。血液は流れが停滞すると凝固して血栓ができやすくなります。飛行機などで長時間座って下肢の血流が滞り、血栓ができて発症する『エコノミークラス症候群』が有名です。
国内での、肺血栓塞栓症を発症した場合の院内死亡率は14%と報告されています。そのうち40%以上が発症1時間内の突然死とされており、臨床診断率の向上だけでは予後の改善は達成できないと考えられています。
よって、発生予防対策が必要不可欠です。
当院では、肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが「中」以上の手術を実施した患者さんに対し、高い割合で予防対策を実施しております。
血液培養2セット実施率ファイルをダウンロード
血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
2161 1997 92.41
血液内の病原菌の有無を調べることを「血液培養検査」といいます。
血液は通常無菌状態で保たれていますが、血液内へ病原菌が侵入すると、血流によって病原菌が全身へ広がり菌血症や敗血症という重篤な感染症となります。それを防止するために、何らかの感染症であると考えられる場合には、速やかに病原菌を特定し治療に効果的な抗菌薬を選択する必要があります。
病原菌は血液中に常時存在するわけではないので、1セットの血液培養検査では原因菌を検出できる確率が限られます(73.2%)。一方、血液培養検査を2セット実施した場合、その確立が20%近く上昇した(93.9%)という研究報告もあることから2セット採取は世界的な標準となっており、感染症治療を行う上で非常に重要な値となっています。
当院では、ICT(感染対策チーム)が中心となりその有用性を教育し、チェック体制を取っていることから高い2セット実施率を達成しております。
広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率ファイルをダウンロード
広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
476 450 94.54
近年、感染症治療において、幅広い菌腫に効く抗菌薬(広域スペクトル抗菌薬)に耐性のある抗菌薬耐性菌(以下、耐性菌)が出現し、難治症例が増加しているのが世界的な問題となっています。
不適切な抗菌薬の使用は、耐性菌の発生や蔓延の原因となることから、当院でもAST(抗菌薬適正使用支援チーム)を組織し、抗菌薬適正使用を推進する取組みをおこなっています。
抗菌薬適正使用の鍵を握るのは正確な微生物学的診断であり、抗菌薬投与前の適切な検体採取と培養検査が必要となります。
当院では、抗菌薬使用時の細菌培養検査の遵守に取組み高い実施率となっています。
更新履歴
R6.9.18
令和5年度病院指標 更新