令和３年度 坂出市立病院 病院指標

当院は、地域の中核病院として幅広い年齢層の患者さんに医療サービスを提供しております。
中でも、がん、循環器、呼吸器を中心とした診療をしていることから60代以上の患者さんの割合が多い傾向にあります。
例年は、小児の患者さんの感染症に対する入院治療も行っていることから、10歳未満の患者さんの割合も比較的高く約15％を占めておりましたが、
コロナ禍での受診控え、感染対策の拡充により極端な患者減となり、例年の3割に満たない患者数まで落ち込み、昨年度は他の感染症の流行により例年の4割までは回復しましたが今後、元通りになることは難しそうです。全体に占める割合では、約8％となりました。
また、60代以上の患者さんは全体の70％超となり、90歳以上の超高齢者も5％を占め、地方の高齢化を反映したものとなっています。
平均年齢は64.0歳となっており、小児科を除いた平均年齢は67.3歳となりました。
上記の結果はコロナの入院患者を含めており、それを除くとR2年度と差異のない、小児の減少による平均年齢の上昇が認められました。
今年度もコロナ診療と一般診療の両立を目指した結果、各年齢層がまんべんなく入院する急性期医療を展開しています。

現在、日本で患者数の最も多い5つのがんを5大がんといいます。
令和3年度の病期（ステージ）ごとの診療実績を集計しました。再発症例については症例数のみ集計しています。
当院でのがん治療の患者数は、大腸がん、肺がん、胃がんの順となっています。
大腸がんは当院で最も多く取り扱っている癌腫ですが、StageⅣの患者数が約40％という結果になりました。例年この割合が30％前後であり、急に重症度の高い患者割合が増えた訳ではありません。これは、コロナによる受診控え、健診控えにより今年度新規に確定診断された患者数が減少し、化学療法目的の入院は一定数あったことで、StageⅠ・Ⅱの早期癌の件数が減少し、StageⅣの件数・割合が増加したことが要因のようです。
肺癌については、StageⅠの早期がんに対して胸腔鏡下の手術施行例が一定数ある一方で、Ⅳ期で診断・治療となる症例や再発治療も多くなっており、手術や抗がん剤治療、患者さんの病状に応じた治療を選択し実施しております。
胃がんでは、内視鏡（カメラ）による早期発見、早期治療が行われているためStageⅠの患者数が例年なら30％を超えておりました。昨年、要因と考えられた新型コロナによる受診控え、健診控えは和らいだ様ですが、例年並みとはならず25％となっています。内視鏡的粘膜下層剥離術（ＥＳＤ）、内視鏡的粘膜剥離術（ＥＭＲ）など内視鏡治療の件数は、コロナ前の5割減のままです。
来年度以降、今年度発見されなかったものや手術ができないまでに進行した癌の発見が懸念されます。
上記は、入院によるものの集計ですが、外来治療も積極的に行っており、外来化学療法室を設置しております。年々、外来での化学療法実施件数が増加しており令和2年度は前年比10ポイント増加した約1300件の外来化学療法を実施しました。
また、患者さんが安心して治療を行うことができるよう、がん関連の認定看護師を中心に多職種がそれぞれの専門性を活かして患者さん・家族のケアに努めております。

市中肺炎とは、普段の社会生活の中でかかる肺炎のことです。
この指標では、細菌による肺炎を集計しており、 インフルエンザウイルスなどのウイルス性肺炎や高齢者で多くなっている食べ物等の誤嚥による肺炎は集計対象外となっております。
"当院では、中等症の患者さんが重症度別では44症例と最も多くなっております。重症度が高くなるにつれて、平均在院日数も長くなる傾向にあり、平均年齢も上昇傾向にあります。高齢者ほど重症化しやすいことが推察されます。
新型コロナの間接的な影響でその感染予防策が結果的に新型コロナ以外の気道感染を減少させ、患者さんの絶対数を減少させました。しかし、入院治療の必要な中等症以上の患者割合に変化はなく、外来診療が可能な念のため入院の軽症の患者が減少しており、適切な治療は実施できているものと考えます。"
重症度に関わらず呼吸器使用の場合もありますが、呼吸器装着から離脱までの管理を多職種からなる呼吸器チームが中心となり行っているので安心して治療を行っていただけます。

脳梗塞治療は特に迅速な治療開始がその後の患者さんのADL（日常生活動作）に影響を与えると言われています。
また、脳梗塞治療でのリハビリテーションは後遺症予防に非常に重要です。当院の脳梗塞患者の平均年齢は80歳を超えており、年齢的に長期臥床を防ぐためにも、発症から平均して2日までにはリハビリテーションを開始するようにしています。
院内で発生した脳梗塞に対しては、TPA（血栓溶解療法）や血管内治療などの超急性期治療は当院では実施できませんので、近隣の医療機関へ紹介転院を行うことで迅速に対応しております。

入院契機が『同一』とは、感染症や合併症の治療を目的として入院されたことを示し、入院契機が『異なる』とは、他の治療目的で入院し たものの、入院中に感染症や合併症の治療が主な治療目的となったことを示しています。
血液の凝固に異常をおこす疾患で播種性血管内凝固症候群（DIC）というものがあります。これは症候群であり病名ではありません。そのため基礎疾患があり、それに伴い発症します。
入院時すでにDICであった患者は40％、残り60％は入院時は原疾患に対する治療を行っていたという結果になっています。入院契機疾患は悪性腫瘍や胆管炎、胆のう炎で多くなっています。
当院では、白血病、感染症（肺炎、腎盂腎炎など）、がん等の疾患を多く取り扱っており、その原疾患に伴い入院後発症したものが多くなっています。
様々な感染症から血液に病原菌が入り敗血症になることがありますが、入院時すでに敗血症の患者さんが88％で残り12％が入院契機疾患は急性腎盂腎炎や尿路感染症、肺炎、化学療法中の易感染の患者さんとなっています。
抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて、感染に対する防御能が低下している人は、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。
当院の手術・処置等の合併症は、約40％が退院後に術後・処置後感染や出血を発症したもの、残りが予防接種後（新型コロナ）の副反応や造影剤や薬剤ショックで入院となったものでした。いずれも元の疾患に対しての治療は終了した後の合併症の発症となっております。