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応急手当

印刷用ページを表示する更新日:2012年7月24日更新

応急手当

1.傷病者の体位と移動

回復体位の写真

反応はないが正常な呼吸をしている傷病者に,嘔吐や吐血などが見られる場合,あるいは周囲にだれもいない状況で,やむをえず傷病者のそばを離れる場合には,傷病者を横向きに寝かせた姿勢(回復体位)にします。

ただし,車が通る路上など傷病者が危険な場所にいる場合は,安全な場所に移動させます。また,心肺蘇生が必要となる場合には仰向け(仰臥位)にします。頭や首(頸椎)がねじれないように頭を支えながら仰向けにします。

[回復体位]

2.首の安静

首の安静

自動車にはねられたり,高い場所から落ちた場合や,胸より上(頭側)に大きな怪我がある場合では傷病者の首の骨(頸椎)を痛めている可能性があります。

このような場合には傷病者の首の骨が動揺しないように安静にする必要があります。

首の安静を図るために傷病者の頭を手で両側から包み込むように支えます。この場合,傷病者の頭を引っ張ったり,動かしたりせず,そのままの姿勢で保持します。

3.酸素投与

市販の携帯型酸素や在宅医療などで使用される医療用酸素が使用されている場合があります。

しかし,酸素吸入する場合でも,119番通報,気道の確保や呼吸の確認などの重要な対応の開始が遅れる,あるいは中断が起こるようなことがあってはいけません。

4.気管支喘息

気管支喘息の発作時には,気管支という肺への空気の通り道が細くなり,呼吸が十分にできなくなります。とくに,重症な発作は致命的になることがあり,迅速な対処が必要です。喘息発作がひどいときは119番通報をしてください。

また,気管支喘息をもつ傷病者では,発作時に使用する気管支拡張剤という吸入薬(口から吸い込む薬)が処方されている場合があります。喘息発作のひどい場合には,自分自身で薬を出したりすることさえも困難になりますので,傷病者の求めに応じて吸入薬を使用できるようにしてあげます。

 5.アナフィラキシー

アナフィラキシーは,ある特定の物質に対する重篤なアレルギー反応であり,気道(喉から肺への空気の通り道)が腫れて息ができなくなったり,血圧が急激に下がったりして致命的になりうる緊急事態です。アナフィラキシーが発生した場合はアドレナリンという特効薬を一刻も早く使用しなければなりません。

このため,過去に重篤なアナフィラキシーになった傷病者のなかにはアナフィラキシーに備えて医師からアドレナリン自己注射器(エピペン)が処方されている方がいます。例えば,ハチの毒に対するアレルギー体質があるのにもかかわらず,ハチに刺される危険性の高い林業関係者などです。

もし,このような傷病者が発生した場合には,すぐに119番通報してください。

そして,アドレナリン自己注射器を処方されており,傷病者が自分自身で対応できない場合には,傷病者の求めに応じてアドレナリン自己注射器を使用できるようにしてあげます。

6.出血

怪我などによる出血はよくあることですが,大量出血の場合は迅速かつ適切に止血できないと命の危険があります。市民が行う止血の方法としては,出血部位をガーゼや布などで直接に圧迫する方法(直接圧迫止血法)が推奨されています。最初に出血部位を確認したら,ガーゼ,ハンカチやタオルなどを重ねて出血部位にあて,その上を圧迫して止血を試みてください。圧迫にもかかわらず,ガーゼが血液で濡れてくる理由としては,

(1)圧迫位置が出血部位から外れている。

(2)圧迫する力が弱いなどが考えられます。直接圧迫止血法では出血部位を確実に押さえることが重要です。

※出血の際には,傷病者の血液に触れると感染を起こす可能性があります。
このため,感染から身を守るために,できる限りビニール手袋やビニール袋を使用してください。

7.傷口の手当

土や砂などで汚れた傷口をそのままにしておくと,化膿したり、傷の治りに支障をきたす場合があります。受傷後,ただちに水道水など清潔な流水により,傷口に明らかな異物が認められなくなるまで十分に傷口を洗ってください。

深い傷や汚染がひどい傷では,洗浄した後,ただちに医療機関を受診してください。

8.やけどに対する冷却と水ぶくれの保護

やけどに対する冷却は,痛みを和らげ,やけどの深さ,腫れ,感染,そして手術の必要性を減らします。このため,受傷後,ただちに水道の流水で痛みが和らぐまで冷やしてください。ただし,氷や氷水などで長時間冷却することは,かえって害になることがあります。

やけどの範囲がひどい場合,全体を冷却し続けると体温を急激に下げる可能性があるので,10分以上の冷却は避けてください。水ぶくれは傷口を保護する効果をもいっています。水ぶくれができている場合は,そのままにしてつぶさないようにそっとガーゼなどで覆い,医療機関を受診してください。

9.骨折・ねんざ・打ち身(打撲)に対する手当て

怪我で手足が変形している場合は,骨折が強く疑われます。この場合は,受傷した手足を動かさずにそのままの状態で安静に保ちます。変形した手足を無理に元に戻そうとしないでください。

移動する際に骨折部位が動いて痛みが強い場合には,変形した手足を固定することで痛みを和らげることができます。添え木や三角巾などを使用して,できるだけ動かさないようにしましょう。捻挫や打ち身(打撲)に対しては冷水などで冷却します。

幹部の冷却は出血や腫れを軽くします。ただし,長時間の冷却は皮膚や神経を痛める原因となるので,20分以上続けて冷やすのは避けてください。氷枕などを使用するさいには,皮膚との間に薄い布をはさんで,直接あたらないようにしてください。

10.歯の損傷

歯ぐきからのからの出血は丸めた綿やティッシュペーパーなどで圧迫して止血を試みてください。抜け落ちた場合,抜けた歯は歯ぐきに戻さず牛乳に入れて,ただちに歯科を受診してください。抜けた歯を持つときには,付け根の部分に触れないようにしてください。

11.毒ヘビ

毒ヘビに手足を咬まれた場合,咬まれた手足を曲げたり伸ばしたりしてしまうと,毒の吸収が早まります。咬まれた手足を安静に保ってただちに医療機関へ受診してください。傷口から毒を吸い出すことは推奨されません。

12.低体温・凍傷

《低体温》

 寒いところで体温が極端に低下すると命の危険があります。この場合,それ以上の体温の低下を防止することが大切です。救急隊や専門の救助者を待つ間,まず暖かい環境に移し,濡れた衣服は脱がせて乾いた毛布や衣服で覆ってください。

《凍傷》

 凍傷は,指先や皮膚露出部が強い寒冷にさらされて傷害を受けた状態です。

まず,濡れたい服は脱がせて乾いた毛布や衣服で覆うなどして体温の低下を防止します。次に,患部を擦らないようにしてぬるま湯で温めます。また,患部を締め付けたり,足が凍傷の場合には体重をかけないようにしてください。とくに凍傷部位が再び強い寒冷さらされる可能性がある場合や,医療機関が近い場合には,温めないでただちに医療機関を受診してください。

13.毒物

《毒物を飲んだとき》

 医薬品,漂白剤,洗剤,化粧品,乾燥剤,殺虫剤,園芸用品,灯油などは中毒事故を引き起こす原因となる物質です。しかし,その初期対応は飲んだ物質により異なっています。もし,毒物を飲んだ場合は水や牛乳などを飲ませたり,吐かせたりせずに,最初に119番通報し,指示を仰いでください。この場合,飲んだ時期,毒物の種類,その量について情報があれば提供してください。

《毒物の付着》

 酸やアルカリなどの毒性のある化学物質が皮膚に付いたり,目に入った場合には,ただちに水道水で十分に洗い流してください。これにより,組織傷害の程度を軽くすることができます。

14.けいれん

けいれんしている傷病者への応急手当のポイントは,

(1)発作中の怪我の予防

(2)発作後の気道確保

(3)119番通報 です。

発作中は怪我を防止するため,家具のかどや階段などの危険な場所から遠ざけてください。とくに,頭は座布団などのやわらかいもので保護してください。ただし,けいれん発作中に無理に押さえつけると骨折などを起こすことがありますので行わないでください。発作中は,舌を咬むことを予防する目的で口の中へ物を入れることは避けてください。歯の損傷や窒息の原因となります。また,指を咬まれる危険性もあります。

けいれんが治まった後は気道を確保してください。意識のはっきりしない状態が続く場合には,誤嚥の予防および気道確保を目的として回復体位にし,119番通報してください。

15.溺水

《水中からの救助》

 溺れている人の救助は,消防隊やライフセーバーなどの専門救助者に任せるのが原則です。溺れている人をみつけたら,ただちに119番通報をします。水面に浮いて救助を求めている場合には,つかまって浮くことができそうなものを投げ入れてください(ペットボトル、ポリタンク等)。さらにロープがあれば投げ渡し,岸に引き寄せてください。水没したら,水没した場所がわかるように目標を決めておきます。水の流れがあるところや水流が見えないところでは,深みがあるおそれがあるため絶対に入らないでください。

《心肺蘇生》

 水中から引き上げたら,傷病者に反応と普段どおりの息があるかどうかを確認してください。水を吐かせるために,傷病者の上腹部は圧迫してはいけません。周囲に誰もいない状況で,119番通報をしていなければ,心肺蘇生(胸骨圧迫30回、人工呼吸2回)を5サイクル行ってから119番通報をしてください。

16.熱中症の予防と対処について

 熱中症の全般的な対処方法等については,同市ホームページ内のけんこう課が掲載している「熱中症に注意しましょう」を参照してください。  

 ここでは,児童・学生の運動時における熱中症対策を重点に記載いたします。 熱中症の発生には,気温や湿度・風速・輻射熱(直射日光など)など,様々な因子が関係し,同じ気温でも湿度が高くなるに従って危険性も高くなるので注意が必要です。

 また,屋外のみならず,屋内の競技でも熱中症は発生します。運動時における熱中症事故は、適切に予防さえすれば防げるものです。しかしながら,予防に関する知識が十分に普及していないため,熱中症による死亡事故が全国的に発生しているのが現状です。
 指導者は,競技を開始する前から前記した様々な熱中症の発生因子を確認し,下記の表を参考に練習方針を定めて,練習中,自由に給水できる環境(自由飲水)を整えるとともに,強制的に水分補給を行う機会(強制飲水)を設け積極的な熱中症の予防に努めるべきです。運動の強度や気温・湿度によって必要な水分補給時間は異なりますが,気温が高い場合は15分から20分ごとに給水時間を設ける必要があります。

 夏場の運動時には,水分補給や熱中症予防に必要な,ペットボトルや保冷剤,冷却スプレー等の物品をあらかじめ準備する事が大切であり,最初から最後まで携行した物品で対処(自己完結型)できるように備えましょう。また,保冷剤や冷却スプレーは捻挫等の応急手当に使用することも可能です。

 熱中症の発症は,上記に掲げる発生因子に加え,競技開始前の選手個々のコンディションの低下によっても発症率が上昇します。多くの熱中症事故は,指導者の判断力に左右される事が多く,事故防止のためには,勇気ある決断力が重要です。

    熱中症の対策      熱中症    

    熱中

気温      (参考)Wbgt     温度  日本体育協会(1994) 熱中症予防のための運動指針より
35℃以上31度以上運動は
原則       中止
Wbgt温度が31度以上では,皮膚温より気温の方が高くなる。
特別の場合以外は運動は中止する。
31~35℃28~31度厳重      警戒熱中症の危険が高いので激しい運動や持久走など熱負担の大きい運動は避ける。運動する場合には積極的に休息をとり水分補給を行う。
体力が低いもの、暑さに慣れていないものは運動中止。
28~31℃25~28度警戒熱中症の危険が増すので、積極的に休息をとり、水分を補給する。
激しい運動では,30分おきくらいに休息をとる。
24~28℃21~25度注意熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。
熱中症の兆候に注意するとともに運動の合間に積極的に水を飲むようにする。
24℃まで21度までほぼ      安全通常は熱中症の危険性は小さいが,水分の補給は必要である。
市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

※Wbgt(湿球黒球温度)とは、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標で、乾球温度、湿球温度、黒球温度の値を使って計算します。

 熱中症と疑われる症状に陥った場合には,迅速に身体を冷却することが大切です。衣服を脱がせて,体を濡らし,うちわや扇風機で風を当てるのが効果的です。氷嚢や保冷材(冷たいペットボトルでも可)があれば両側の頸部や腋(わき)の下,太ももの付け根などを冷やすのも有効です。

     熱中症