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おじょもの話

印刷用ページを表示する更新日:1998年10月23日更新
いつの頃かわからんが,遠い遠い昔のことや。
 讃岐の国は住みよいええとこじゃ。
 ある春の日やけどな,うららかな陽がさしていたんや。
 うっとりして,『こっくり こっくり』と,居眠りでもしそうな日やったんや。
 そこへ,海の向こうから,『ピョン ピョン』軽々と跳んで来る大けな人がおるんやがな。
 あっという間に,島を跳び跳びやって来たんで,ほんまにびっくりしてしもたんや。
 大きょな大きょなごたい(身体)やったんや。瀬戸内海を「よいしょこら どっこいしょ」というて,ひとまたぎに来たんやで。
 こんまい島やら,大きょい島やら跳んで,よう足を滑らさんもんやな。島はちょっとぐらいは,海の中にずりこんだやろな。
 その頃は何にもない島やったんやがな。一番大きな島やったんで,上がって来たんやろうな。
 この大きな島が,讃岐の国,阿波の国,土佐の国,伊予の国と四つに分かれているんや。
 名前はわからんけど,今やったら,怪獣みたいな大きょい人やと思うんや。
 見たことがないので,皆びっくりして腰抜かしてしもて,あっちこっち逃げ回ったんやと。
 讃岐の国では,大男にびっくりして大騒ぎしたんや。
 西や東やに,棒を持ったり石を持ったり,腰抜かした人を引っ張ったり,大人も子供も男も女も,そらぁーもの凄かったんやがな。 そらぁ,どなんしても勝つことは出来んので,そらぁ恐ろしかったやろうと思うがな。
 今やったら,「怪獣や 怪獣や」と喜ぶかもしれへんけどな。
おじょものイラスト  その人は,白い着物の上に,黒い衣を着,ふごを天びんでかついでやって来たんや。
 皆が大騒ぎした後で,名前を付けることにしたんや。ほいで付けたんが,《おじょも》やがな。
 もの凄く大きょて,頭を雲の上に出しているんで,顔はわからんのや。おじょもも跳んで来たもんの,こんまい豆みたいな人間がおるんで,びっくりしてしもたんや。
 その豆みたいな人間が,ちょこちょこ大騒ぎしているもんで,どこばれに足も降ろせず困っとったんや。
 おじょもは,かついでいたふごをうつしたんや。そんで,前のふごを移して出来たんが飯野山で,後ろのふごを移したんが郷師山やがな。
 おじょもが,やれやれと讃岐の山に腰掛けて,悪いこともせんので,讃岐の人々もじっと成り行きを見守ることにしたんや。
 しばらく休んだんやが,あんまりええ天気やけに,気持ちがようなって,「ええ天気やのぉ」というて,郷師山と飯野山の上に足をかけて,しょうべんをしたんや。ほんで土が流れて出来たんが,大束川やと。
 川津地区の地図 大束川のことは,今でも『しょうべん川』ともいうんや。この川は,付近のお百姓さんたちには大事な川やがな。
 その時のしょうべんが,飛び散って土が掘れて出来たんが,川池と尾池や。今でも折居部落の入口に,2つ仲良く並んであるんや。 ように見たら,川池は魚の形で,尾池は船の形になっとるんや。
 郷師山の上から見ると,ようわかるんやがな。
 おじょもも,そう思って見たんかもわからへんけどな。
 お米を作るのには大事な池やがな。しょうべんで出来た池の水やけに,お米もようけ出来て,おいしいんやろな。
 池や川が出来たんで,おじょもは東の方を見とったんや。
 海の縁で高い山があるんで,あんまり高うて向こうが見えんので,上の半分を『ギッコ ギッコ』とノコギリで切ったんや。
それを横に,ヨイショと降ろしたんや。半分に切られた下の方は今の屋島で,上の半分を降ろしたんが,八栗の山やがな。
 いろんなことをしたんで疲れてしもうて,大きなごたい(身体)を,どっかりおろして休んだんじゃ。
 その時,片足をついた所が,春日の里あたりやと。その足跡がいで(水路)の中にあるんや。
 今はちょっと見にくいんやけどな,長いこと雨や水にさらされて,だんだんこんもになっていくみたいやけどな。
 ほんまやで.....。
 そんで,今でも飯野山の上に登ると,おじょもの足跡が大きな岩の上に,はっきりとついているんじゃ。
 雨が降って,山の土が流れてしまうんで,木を植えることにしたんや。木は不思議と大きくなったんや。
 かっこのええ飯野山は青々と育った木に包まれて,けっこに見えるんや。誰が云うたか知らへんけど,飯野山のことを讃岐富士とゆうて,けっこいかっこを毎日見る事が出来るんや。
 今でも晩がきたら,おじょもが郷師山からトコトコと降りて来るんや。そのおじょも道が,今でも折居にあるんじゃ。
 そのおじょもを見たという人が,ようけおるんじゃ。
 米とぎよったおばあさんが,井戸の端で腰抜かしたんやと...。
 今も,おじょもがどっかにおって,晩になったら,おじょも道を通っているかも知れへんぜえ。ばんげになったら,早よう家に帰るようにしようなあ。
おわり

 郷師山には,勉強の神様の黒岩の天神さんがあります。
 天神さんの上に,お薬師さんがあって,そこの洞穴の中の水で,海の満潮と引潮が解っていたそうです。
 春日の里のおじょもの足跡は,今では春日神社に奉納されております。

出典 「川津のむかし話」昭和58年川津町子供会作成